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なぜ薬は病院ではなく薬局で売られるようになった?

なぜ薬は病院ではなく薬局で売られるようになった?

アメリカ合衆国での歴史的背景

ひと昔前まで普通だった院内処方は最近あまり見なくなりました。なぜ薬は病院、クリニックなどの医療機関ではなく薬局で売られるようになったのでしょうか?

日本で現在当たり前になっていますが、他の政府が決めた日本の多くの制度と同様にアメリカの先例に習ったシステムと言えます。

では、まずアメリカでなぜ薬が病院ではなく薬局で売られるようになったのかを見ていきましょう。

初期の医療と薬局

アメリカの初期の医療システムでは、医師が自ら薬を調合し、患者に提供していました。しかし、都市部の発展とともに、薬剤師という専門職が確立され、それに伴い薬局が発展しました​。これにより、医師と薬剤師の役割が明確に分化され、医師は診断と治療に集中し、薬剤師は薬の調合と販売を担当するようになりました。

教育と認定

1821年にフィラデルフィア薬科大学が設立され、薬剤師の教育と認定が進みます。これにより、薬剤師は薬の専門的な知識を持ち、薬の調合と販売を行うことができるようになりました​ ​。

ダラム・ハンフリー修正条項

アメリカにおいて薬が病院ではなく薬局で販売されるようになった背景には、1951年に制定されたダラム・ハンフリー修正条項が大きな役割を果たしています。この法律が制定された理由を詳しく見ていきましょう。

ダラム・ハンフリー修正条項の制定理由

  1. 薬の安全性と自己投薬の危険性
    1938年の食品・医薬品・化粧品法(FDCA)により、薬品の安全性が強化されましたが、依然として医薬品の使用に関する明確なガイドラインが欠如していました。多くの薬が安全に使用されない可能性があり、特に依存性のある薬や有害な副作用を持つ薬が問題視されました​ ​。これらの薬は自己投薬には適さず、医師の監督下でのみ使用されるべきと判断されました。
  2. 処方薬とOTC薬の区分の必要性
    ダラム・ハンフリー修正条項は、薬を処方薬(Prescription, Rx)と一般用医薬品(Over-The-Counter, OTC)の2つのカテゴリに明確に区分しました​ ​。これにより、患者は医師の診断と処方に基づいて以前より安全に薬を使用することができるようになりました。また、薬局が処方薬を適切に管理し、医師の指示に従って薬を提供するシステムが確立されました。
  3. 薬剤師の役割と医療提供の効率化
    ダラム・ハンフリー修正条項は、薬剤師が医師の指示に基づいて薬を調剤・販売する役割を強化しました。これにより、医師は診断と治療に集中でき、薬剤師は薬の専門知識を活かして患者に安全で効果的な薬を提供することができるようになりました​ ​。このシステムは、医療提供の効率を高め、患者が適切な医療を受けるための重要な基盤となりました。
  4. 法的規制と消費者保護
    ダラム・ハンフリー修正条項は、薬の販売における法的規制を強化し、消費者保護を目的としました。これにより、薬品の誤用や過剰使用を防ぎ、医薬品の安全性と有効性を確保することができました​ 。

ダラム・ハンフリー修正条項の制定により、薬の安全性が確保され、医師と薬剤師の役割が明確に分けられました。この法改正は、患者が適切な医療を受けるための重要なステップであり、薬局が薬の販売を専門とするシステムを確立することに繋がりました。これにより、病院は診断と治療に専念でき、薬局は薬の専門知識を活かして患者に薬を提供するという効率的な医療提供システムが実現しました。

日本で薬は病院ではなく薬局で売られるようになった理由は上記のようなアメリカのシステムを手本にして導入されたからと言えますが、以下のような理由も一般的には言われています。

1. 医薬分業の推進

厚生労働省は、医療機関と薬局の役割を分担することで、より質の高い医療を提供することを目指しています。具体的には、以下のような効果が期待できます。

  • 薬剤師による服薬指導の徹底: 薬剤師は、薬の飲み合わせや副作用などについて患者に詳しく説明し、安全かつ効果的な服薬をサポートすることができます。
  • 医療機関の業務分担: 医師は、診断や治療に専念することができ、薬剤師は服薬指導や薬の管理に集中することができます。
  • 医療費の抑制: 医薬分業により、医療機関の薬剤在庫が減少し、薬剤費の節約につながることが期待できます。

2. 患者さんの利便性の向上

院外処方により、患者さんは以下の利便性を享受することができます。

  • 待ち時間の短縮 : 処方箋を持って薬局に行くだけで薬を受け取ることができるため、病院の待合室で待つ必要がありません。
  • 薬局の選択自由度: 複数の薬局から選ぶことができるため、自分に合った薬局を選ぶことができます。
  • 営業時間の自由度: 多くの薬局は、病院よりも長い時間営業しています。

もちろん、院内処方にもメリットがあります。例えば、医師と薬剤師が連携して、よりきめ細やかな服薬指導を行うことができるという点です。しかし、近年では、上記のような理由から、院外処方が主流となっています。>
なお、日本では、1960年代から医薬分業が推進されていますが、当時は多くの反対意見もありました。しかし、近年では、その効果が認められ、多くの医療機関で院外処方が取り入れられています。

 

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