特に飲食店で出される瓶ビールのコップって小さいですよね。 では瓶ビール用のコップが小さいのはなぜなのでしょうか?
こんなことはありませんでしょうか? 食べ物を山盛りにして出されると、こんなにたくさんは食べられないと、視覚的情報から自分の限界を決めてしまい、実際にその量を食べられない。
しかしその半分の量を出されると簡単にそれを完食し、さらに同じ量のものまた出されても案外それを食べられてしまう。
つまり小さいコップに入れてビールを出すと、飲んでいる人はどれだけたくさんの量を自分が飲んでいるかを視覚的に把握しづらくなり、結果として多くの量を飲むことになる。すなわちより多くのビールを消費する。 お店としてはたくさん消費していただいた方が利益につながるのでよいわけです。 ビールを出すお店では、小さいグラスを用いた方がお客さんが結果的に多くの量を飲んでくれると言うことが経験から分かったのではないでしょうか。
視覚と心理は、食べ物や飲み物の消費量に大きな影響を与える要素です。ここでは、小さなコップがどのようにビールの消費を促進するかについて、さらに詳しく探ってみましょう。
人間の脳は、食べ物や飲み物の量を視覚的に判断します。大きな量が一度に提供されると、視覚的に圧倒されてしまい、「これ以上は無理」と感じることがあります。例えば、山盛りの料理を見たとき、多くの人は「こんなにたくさんは食べられない」と思い、実際にその量を食べきれないことが多いです。
ビールの場合も同様で、大きなジョッキに大量のビールが入っていると、それだけで満腹感を感じやすくなります。一方、小さなコップに少量ずつ注がれると、飲む量を少なく感じやすくなります。この視覚的なトリックにより、気づかないうちにビールを何杯も飲んでしまうことがあります。
視覚的な影響とともに、心理的な効果もビールの消費量に大きく影響します。以下のような心理的なメカニズムが働きます。
これらの視覚的および心理的な効果を利用して、お店はビールの消費を促進することができます。以下のような戦略が考えられます。
日本では、ビールを小さなコップで少しずつ飲むことが一般的です。この方法には社交的な意味合いも含まれています。相手のコップが空になる前に注ぎ足すという礼儀作法があり、これが親密さを示す行為とされています。これにより、コミュニケーションが円滑になり、楽しいひとときを過ごすことができます。
ビールグラスが小さい理由は、上記以外にもいくつか考えられます。以下、歴史的な観点から詳しく説明します。
中世ヨーロッパでは、ビールは貴重な飲み物でした。当時はまだ製法が確立されておらず、生産量も限られていたため、庶民にとっては高価なものでした。そのため、ビールを大切に味わうために、小さいグラスが使われていました。
中世ヨーロッパでは、衛生状態が現代ほど良くありませんでした。そのため、ビールを腐敗させないように、一度に飲む量が少ない方が好ましいと考えられていました。小さいグラスは、ビールの量を減らすことで、腐敗を防ぐ効果がありました。
一部の国では、ビールの量によって税金が課せられていました。そのため、税金を節約するために、小さいグラスが使われていました。例えば、イギリスでは17世紀から18世紀にかけて、ビールの量によって税率が異なる「ビアグラス法」が施行されていました。この法律により、小さいグラスの方が税金が安くなったため、多くの人々が小さいグラスを使うようになりました。
中世ヨーロッパでは、ガラス製のグラスがまだ高価でした。そのため、庶民は陶器や木製のコップでビールを飲むことが多かったようです。これらの素材で作られたコップは、重量が重く、壊れやすいという欠点がありました。そのため、小さいサイズの方が扱いやすく、量産もしやすかったと考えられます。
中世ヨーロッパでは、ビールは主に労働者階級の人々が飲む飲み物でした。貴族階級の人々は、ワインを好んで飲むことが多かったようです。そのため、ビールグラスは、労働者階級の人々向けのシンプルなデザインが主流でした。小さいサイズは、持ち運びにも便利で、場所を取らずに飲むことができました。
ビールを小さなコップで提供することには、温度管理や風味の維持、文化的な要因だけでなく、視覚的および心理的な効果も大きく関与しています。これらの要因が組み合わさることで、ビールの消費量が自然と増え、お店の利益向上にもつながるのです。次回ビールを楽しむ際には、この小さなコップの秘密を思い出し、さらに充実したひとときを過ごしてみてください。