近年、環境保護やエネルギー効率の観点から、蛍光灯の製造および輸出入が禁止される動きが進んでいます。2024年12月24日、日本政府は「水銀に関する水俣条約」の合意に基づき、2027年末をもって一般照明用蛍光灯の製造・輸出入を禁止する政令改正を閣議決定しました。この措置がなぜ必要とされるのか、その背景や今後の影響について詳しく解説します。
蛍光灯がなぜ製造禁止、生産終了になるのかをみていきましょう。
蛍光灯には微量の水銀が含まれています。水銀は有害物質であり、廃棄時に適切に処理されないと、土壌や水質を汚染し、さらに生態系や人間の健康に深刻な影響を及ぼします。特に水銀は神経系に悪影響を与えることで知られ、蓄積性が高く、長期的に人体や環境にリスクをもたらします。
こうしたリスクを回避するため、国際的には「水銀に関する水俣条約」が2013年に採択されました。この条約は水銀使用製品の削減を目的としており、日本も締約国として条約の目標達成に向けた取り組みを行っています。
水俣条約に基づき、多くの国々で水銀を含む製品の段階的な廃止が進められています。蛍光灯もその対象の一つであり、欧州連合(EU)やアメリカではすでに類似の規制が導入されています。日本でも、環境負荷軽減の観点から水銀含有蛍光灯の製造禁止が決定されました。
生産終了となる蛍光灯の代替として推奨されるのがLED照明です。LED照明は蛍光灯に比べて以下の点で優れています:
こうした利点から、日本政府は2030年までにすべての照明をLED化する目標を掲げており、蛍光灯の禁止はその目標達成に向けた一環でもあります。
蛍光灯の製造禁止や生産終了が進むことで、既存の蛍光灯の入手が徐々に困難になります。多くの家庭や企業が使用している蛍光灯器具は、今後、LED照明に移行する必要があります。この際、初期費用が高いと感じる場合もありますが、長期的なランニングコストの削減で相殺されると考えられています。
蛍光灯の段階的な製造禁止あるいは生産終了が進む中で、蛍光灯の在庫不足や価格上昇が予想されます。特に、交換用の蛍光灯を確保できない場合、照明器具自体の交換が必要となるケースもあります。そのため、早めに在庫を確保するか、計画的にLED化を進めることが重要です。
使用済み蛍光灯の廃棄方法についても注意が必要です。水銀を含む製品であるため、適切なリサイクルや廃棄処理を行わなければ環境汚染の原因となる可能性があります。自治体やリサイクル業者の指示に従い、安全に処理することが求められます。
蛍光灯の製造・輸出入禁止は、環境保護やエネルギー効率向上を目的とした重要な措置です。日本国内でもLED化が進む中、この動きは持続可能な社会への一歩といえます。各家庭や企業は、計画的なLED照明への切り替えを進めることで、この移行をスムーズに乗り越えることができます。
環境や未来の世代に配慮した取り組みとして、この政策を理解し、実践することが求められます。