日本の百貨店に行くと、ほとんどのお店が
このような配置になっているのをよく見かけますよね。なぜこんなにもパターンが似通っているのか、疑問に思ったことはありませんか?
今回は、「地下に食品売り場、上階にレストラン」がある理由を紐解いてみましょう。
食品は日常的に買うものです。なので、「駅や地下街から直結していてサッと寄れる場所」にあると非常に便利。都市部の百貨店の場合、ターミナル駅や地下鉄駅とつながっているケースが多く、地下から入ってすぐ食品売り場があるというのは理にかなった配置です。
食品は鮮度が命。大量の在庫を保管したり、毎日多くの食材を搬入出したりと、デパート内での物流動線をしっかり確保する必要があります。地下は1階にも近く物品の搬入にも効率がよく、また地下には荷受け場や搬入口を設けやすく、温度や衛生管理もしやすいため、食品売り場に適しているのです。
1階は人が最も行き来するフロア。百貨店としては、華やかなブランドショップや化粧品カウンターを配置してイメージアップを図りたい場所でもあります。また、化粧品売り場は接客がメインなので、適度に開けた空間や自然光を活かしやすいこともメリット。こうした理由から、しばしば地下が食品、1階が化粧品やブランドショッという構成が自然に生まれました。
レストラン街は比較的余裕を持って食事を楽しむ場合に利用されますよね。多少上階まで移動しても気にならず、むしろ「食事に行く途中や帰りに途中のフロアで買い物をする」機会を増やせます。百貨店としては、上階へ向かう動線を活用して“ついで買い”や“ウインドウショッピング”を狙うことができるのです。
飲食店は料理のにおいや音などが発生しやすいので、商品販売フロアと少し離したほうが望ましい場合があります。最上階やその付近にレストラン街を集中させることで、他の階への影響を軽減する効果も期待できます。
上層階にあるレストランは、眺望がよかったり、“上まで上がるワクワク感”を演出したりと、ちょっとした特別感を与えることができます。「せっかく百貨店で食事をするなら、少し非日常的な空間を味わいたい」というニーズにも応えられるのです。
近年の大型ターミナル百貨店などでは、メインの入り口が2つ以上あるケースが珍しくありません。とくに地下鉄に直結している場合、駅側の地下入り口からは食品売り場へ直結し、地上(1階)からは化粧品カウンターやブランドショップへ入れるというパターンが多く見られます。
また、駅ビルが“ダブルデッキ構造”になっており、2階や3階と直結している場合には、地下に生鮮食品、1階に菓子やケーキなどの食品売り場、2・3階に化粧品カウンターというように、フロアごとに食品・化粧品の位置関係を使い分けるのが一般的です。
さらに興味深いのは、化粧品売り場は常に食品売り場より上のフロアに配置されることが多い点。これは「においは基本的に上に行きやすい」ことが関係しています。食品の調理・販売を行うフロアの上に化粧品のフロアを置くことで、他の階に食べ物のにおいが広がるのを軽減し、逆に化粧品のフレグランスをマスキング効果として活かせるという狙いもあるのです。
ただし、化粧品の香り自体は食事に適したものではありませんから、最終的にレストラン街(たとえば8階など)までその効果が及ぶわけではありません。においを遮断するための空調設備やフロア構造の工夫をしつつ、あくまで“お互いのにおいが干渉し合わないようにする”というのが最大のポイントなのです。