NHK大河ドラマ『べらぼう』に登場する「忘八」という言葉は、女郎屋の主人たちが自らを指す言葉として描かれています。彼らは道徳を完全に捨て去り、金儲けのためだけに行動し、遊女たちを人間扱いしないほどの冷酷さを露わにしています。
本記事では、この「忘八」という言葉の意味と、ドラマ内での特殊な描かれ方について掘り下げていきます。
「忘八」(ぼうはち)という言葉は、江戸時代に広まったもので、以下の八つの徳目を「忘れた」者を指します:
これらの徳目は当時の社会で守るべき基本的な価値観とされていましたが、「忘八」と呼ばれる人々はそれらを完全に無視し、欲望のままに生きる者として蔑まれていました。
『べらぼう』の中で、「忘八」は単なる蔑称として使われるのではなく、女郎屋の主人たちが自らを「忘八」と称する点が重要です。これには、彼らの金儲け至上主義の姿勢が如実に表れています。
彼らにとって、遊女たちはもはや人間ではなく「商品」に過ぎません。彼らは道徳や倫理を完全に捨て去り、どれだけ非人道的であっても金を稼ぐことが最優先でした。この開き直りの姿勢が、自ら「忘八」と名乗る理由になっています。
遊女たちがどれほど苦しもうと、そのことに関心を持たず、彼ら自身の私腹を肥やすことだけに執着していました。この非道な行為を自覚しながら、それを隠そうともせず、堂々と自らを「忘八」と称する姿勢は、冷徹さと同時に人間としての堕落を象徴しています。
「忘八」とは単なる自己否定ではなく、むしろ自らの行いを肯定し、周囲からの批判を意に介さない挑発的な態度をも表しています。この言葉を自らに冠することで、彼らは倫理や道徳への挑戦状を叩きつけているようにも見えます。
『べらぼう』を通じて描かれる「忘八」の姿勢は、現代社会における問題とも通じる部分があります。例えば、利益追求のために他者の尊厳を無視する行動や、人間性を軽視する態度などです。
ドラマを視聴する中で、この「忘八」という言葉が持つ重みや、その背後にある人々の冷酷な行動の背景を知ることで、物語がより深く理解できるのではないでしょうか。