2024年末、欧州宇宙機関(ESA)と米航空宇宙局(NASA)は、**「2024 YR4」と名付けられた小惑星が2032年12月22日に地球に衝突する可能性が1.2%**あると発表しました。この確率は一見すると低いように思えますが、天文学者の間では決して無視できない数字とされています。
本記事では、小惑星衝突のリスクや影響、これまでの事例、そして人類が現在進めている防衛策について詳しく解説します。
宇宙には無数の小惑星が存在しており、その中には地球に接近するものも少なくありません。直径140メートル以上の小惑星は、もし地球に衝突すれば壊滅的な被害をもたらす可能性があるとされ、NASAやESAはこれらの「潜在的に危険な天体(Potentially Hazardous Asteroids, PHA)」を継続的に監視しています。
今回話題になっている**「2024 YR4」は、推定直径40〜100メートル**とされています。このサイズの小惑星が地球に衝突した場合、以下のような影響が考えられます。
1908年にロシアのツングースカ地方で発生した大爆発は、直径50〜60メートル程度の隕石が大気圏内で爆発したと考えられています。この爆発により、約2,000平方キロメートルの森林が倒され、広範囲に影響を及ぼしました。
2013年には、直径約20メートルの隕石がロシア・チェリャビンスク上空で爆発しました。この衝撃波により、多くの建物の窓ガラスが割れ、1,500人以上が負傷しました。幸いにも地上への直接的な被害は限定的でしたが、わずか20メートルの隕石でも都市レベルの影響を及ぼす可能性があることを示しました。
科学者たちは、小惑星衝突のリスクを低減するために、さまざまな防衛策を検討しています。現在、NASAやESAが取り組んでいる主要な防衛策を紹介します。
2022年9月、NASAは「DART(Double Asteroid Redirection Test)」ミッションを実施し、小惑星ディモルフォスに探査機を衝突させ、その軌道を変えることに成功しました。これは人類が初めて小惑星の進路を変えた実験であり、今後の小惑星防衛技術の重要な第一歩とされています。
NASAは「近地球天体(NEO: Near-Earth Object)」の監視を強化しており、新しい小惑星が発見されるたびに、衝突のリスクを計算し、必要に応じて対策を講じる計画を立てています。
映画『アルマゲドン』のように、小惑星に核爆弾を設置して破壊する方法も理論的には可能とされています。しかし、現実的には小惑星の破片が地球に降り注ぐリスクがあるため、この方法は慎重に検討されています。
現時点での「2024 YR4」の衝突確率は1.2%とされていますが、追加の観測データによりこの確率はさらに下がる可能性が高いと考えられています。過去にも、初期の予測で高い衝突リスクとされた小惑星が、その後のデータ修正により「安全」と判断されたケースは多数あります。
それでも、小惑星衝突のリスクは決してゼロではありません。NASAやESAは今後も監視を続け、必要な場合には軌道変更の対策を講じる予定です。一般市民としては、過度に不安になるのではなく、宇宙機関の発表を注視しながら、科学の進歩を見守ることが重要です。
小惑星衝突の危機は映画の中だけの話ではなく、現実に起こりうる現象です。しかし、科学技術の発展により、人類は宇宙の脅威に立ち向かう術を手にしつつあることもまた事実です。今後の研究と監視体制の強化に期待しつつ、引き続き情報をチェックしていきましょう。