江戸時代、日本にはすでにさまざまな辞書が存在していました。その中でも、庶民の間で広く使われたのが『節用集(せつようしゅう)』と呼ばれる辞書です。その節用集をさらに改良し、より簡単に語を引けるようにしたのが『早引節用集(はやびきせつようしゅう)』です。
この記事では、『早引節用集』とは何か、その特徴や歴史について詳しく解説します。
『早引節用集』を知るには、まず『節用集』について理解することが大切です。
『節用集』とは、日常生活でよく使われる語をまとめた和漢辞書のことです。
江戸時代でも現在と同じように単語の意味を調べるためや語彙を増やすように辞書を活用していました。
現代の国語辞典のようなものですが、単語が意味ごとに分類されており、当時の人々が語彙を学ぶための実用書でした。
『節用集』は室町時代から存在し、江戸時代に入ると広く普及しました。当初は武士や知識層が使用していましたが、江戸時代中期以降になると、商人や庶民の識字率が向上し、より実用的な辞書が求められるようになりました。
『早引節用集』は、従来の『節用集』を改良し、より簡単に素早く調べられるようにした辞書です。具体的な特徴として、次のような点が挙げられます。
『早引節用集』の「早引」とは、「早く引ける」、つまり「すぐに調べられる」ことを意味します。
江戸時代の人々にとって、辞書を素早く引けることは非常に重要でした。特に、商人や職人などは仕事の合間に文字を調べる必要があり、時間の節約が求められていました。
一般的な『節用集』では、語彙が意味ごとに分類されていましたが、『早引節用集』はさらに検索のしやすい工夫が施されていたと考えられます。
具体的な検索方法には、以下のようなものがあった可能性があります:
これにより、従来の辞書よりも効率よく語を調べることができたのでしょう。
江戸時代には、寺子屋(庶民のための学校)で学ぶ人々が増え、読み書きを身につけた町人や農民が増加しました。
そのため、彼らが簡単に使える辞書が求められ、『早引節用集』のような手軽な辞書が生まれたのです。
江戸時代には、辞書や手引書が数多く出版されました。『節用集』以外にも、以下のような辞書が存在していました。
こうした中で、『早引節用集』は素早く語を調べるための便利な辞書として、江戸の庶民の生活に役立っていたと考えられます。
『早引節用集』は、江戸時代に作られた検索しやすい実用的な辞書です。従来の『節用集』を改良し、より素早く語を調べられるように工夫された点が特徴です。