February 3, 2025
江戸時代の出版業界を語るうえで欠かせないのが「地本問屋(じほんどいや)」と「地本(じほん)」という言葉です。これらは、特に浮世絵や草双紙(くさぞうし)などの娯楽向け出版物に関わる重要な要素でした。本記事では、それぞれの意味や役割、歴史的背景について解説します。
「地本(じほん)」とは、主に草双紙や黄表紙、合巻といった娯楽向けの絵入り本を指す言葉です。簡単に言えば、江戸時代の大衆向け書籍の総称です。特に、挿絵が多く物語性のある出版物に使われることが多く、「地本屋」という書店も存在しました。シンプルに言えば一般庶民が手にしたり読んだりすることが出来る本のことです。
地本問屋(じほんどいや)とは、地本(草双紙や浮世絵)を出版・販売する問屋(卸売業者)のことを指します。現代で言えば、出版社や取次業者に近い存在です。
江戸時代の出版流通は以下のような流れでした。
つまり、地本問屋は地本の流通を担う中心的な存在でした。
地本問屋は18世紀後半から19世紀にかけて江戸の日本橋や京橋を中心に発展しました。特に、浮世絵版画の出版が盛んになるにつれ、地本問屋の役割も拡大しました。
幕末から明治時代にかけて、日本の出版業界は大きく変化しました。以下の要因により地本問屋は徐々に衰退しました。
地本と地本問屋は、江戸時代の出版文化を支えた重要な存在でした。
現代においては、地本という言葉はあまり使われなくなりましたが、江戸時代の出版文化を語るうえで非常に重要な概念です。