陰謀論にハマる人は、特定の心理的・社会的な要因を持っていることが多い。単なる知識不足や情報弱者の問題ではなく、人間の認知バイアスや社会環境が影響している。以下に、陰謀論にハマりやすい人の特徴をいくつか挙げて論じていく。
現実世界は複雑で、不確実な要素が多い。しかし、陰謀論は「支配層 vs. 一般市民」「悪の組織 vs. 善良な人々」といった単純な図式を提示する。このような単純なストーリーは、人々に「自分が世界の裏側を理解している」という安心感を与え、複雑な現実を直視するよりも魅力的に映る。
例:
「新型ウイルスは自然発生ではなく、政府や特定の組織が作ったものだ」といった陰謀論は、ウイルスの発生原因が複雑であることを認めたくない心理から生まれる。
陰謀論を信じる人は、「一般人とは違い、自分は真実を知っている」という優越感を持ちやすい。特に、社会的に認められにくい立場の人ほど、「大衆は騙されているが、自分は騙されない」という感覚を持ちたがる傾向がある。
例:
「メディアはすべて嘘を報道している」「本当の情報はYouTubeや匿名掲示板にしかない」という考え方を持つ人は、自分だけが”本当のこと”を知っていると信じることで自己肯定感を高める。
政府、マスメディア、大企業、学術機関などの権威を信用しない人ほど陰謀論にハマりやすい。この不信感は、過去の政治スキャンダルや経済格差の拡大によって助長されることが多い。
例:
「医療業界は儲けるために病気をわざと作り出している」「政府は真実を隠している」といった主張は、権威への不信感を背景にしている。
人間の脳は、偶然の出来事の中にパターンを見出す能力がある。しかし、陰謀論を信じる人はこの能力が過剰に働き、無関係な出来事を結びつけてしまう。
例:
「有名人がある特定のサインを出した=秘密結社のメンバーだ」「大災害の直前に特定の投資家が株を売った=事前に情報を得ていた」といった考え方。
陰謀論者の多くは、情報の真偽を確かめるリテラシーが低い。特に、SNSは陰謀論が拡散しやすい場であり、共感する人たちが集まることでエコーチェンバー(自分と同じ意見しか目に入らない環境)が形成されやすい。
例:
「Twitterでこの情報を見たから本当だ」「YouTubeで暴露動画を見たから間違いない」といった思考に陥る人は、陰謀論に引き込まれやすい。
陰謀論を信じる人の特徴として、「論理的思考ができない」という要素は確かに関係している。ただし、単に「バカだから信じる」という話ではなく、「局所的な論理の中だけで整合性が取れていれば納得してしまう」という問題がある。
陰謀論は、一見すると筋が通っているように見える。例えば、ある陰謀論が以下のような論理展開をしていたとする。
このような主張は、一つの枠組みの中では「筋」は通っている。しかし、多角的に見れば破綻している。例えば、
このように、異なる角度から見れば矛盾が生じる。しかし、論理的思考に欠いて陰謀論を信じる人は「自分の信じたい理屈」だけで完結し、それ以上の検証をしない。
論理的思考とは、本来「整合性があるか」だけでなく、「多面的に矛盾がないか」を考えることが含まれる。しかし、陰謀論を信じる人は、ある一つの理論が内部的に筋が通っていれば、それが”真実”だと誤解する。
例えば、以下のような陰謀論的主張がある。
この話は、ある意味で「一貫性がある」。
しかし、論理的思考ができる人なら「他の可能性」を考える。
このように視野を広げることで、陰謀論が破綻していることに気づける。
論理的思考ができない人は、「自分の理論を疑う」という発想を持たない。特に、以下のような思考パターンに陥りがちである。
つまり、論理的に考えるべき場面で 「反証があること=陰謀の証拠」 という逆転の思考をする。その結果、どんなに強い証拠があっても、それを受け入れず、自分の考えを強化する方向に進んでしまう。
陰謀論は、感情に訴える論理を使うことで、論理的であるかのように見せかける。
例えば、
「こんなに多くの人が信じているのだから、真実のはずだ!」
しかし、これは 「多数が信じること=真実」ではない という誤った前提に基づいている。
他にも、
このように、論理の「フリ」をしているが、本質的には 「証拠のない推測」 であることが多い。
論理的思考ができる人は、「何が事実で、何が推測か?」を整理する。
しかし、陰謀論にハマる人は 「主流の意見だけを疑い、陰謀論は疑わない」 という思考になっている。
例えば、
つまり、「全てを疑う」のではなく、「自分が信じたくないものだけを疑う」 という偏った思考をする。
境界知能(IQが70~85程度)の人々が陰謀論にハマりやすいのは、論理的思考力の弱さ が影響している可能性は高い。しかし、それは単なる「知能の問題」ではなく、認知バイアスや情報処理能力の特性とも関係している。
境界知能の人々は、一般的に以下のような特徴を持つことが多い。
抽象的な思考が苦手
→ 「AがBを引き起こした」という因果関係は理解できても、「AとBの間に他の要素が関与している可能性」までは考えにくい。
多角的な視点で物事を見るのが難しい
→ 1つの視点(自分の知っていること、信じていること)に固執しやすく、他の可能性を考えることが苦手。
論理的な整合性よりも直感的な納得感を重視する
→ 「なんとなくそう思う」「みんなが言っているから正しい」という感覚で物事を判断する傾向が強い。
情報の信頼性を評価するのが苦手
→ フェイクニュースや偏った情報に騙されやすく、情報の出所や証拠の有無を精査するのが難しい。
これらの特性が陰謀論にハマることとどう関係しているのか、具体的に考えてみる。
陰謀論は、複雑な現象を単純なストーリーで説明しようとする。
例:コロナウイルス陰謀論
「ワクチン接種が始まってから死亡者が増えた → ワクチンが原因だ!」
(実際は、高齢者や持病のある人が先に接種し、その後の死亡率に影響が出ただけ)
本来ならば、「相関関係と因果関係は違う」という論理的な理解が必要だが、境界知能の人にはこの違いを認識するのが難しい。
陰謀論は、感情に訴える形で広まることが多い。
例:「エリート層が庶民を支配しようとしている」
→ 「そうか!だから自分の生活が苦しいんだ!」
→ 「政府の言うことは全部嘘かもしれない!」
境界知能の人は、論理的な整合性よりも、こうした感情的な説明に強く反応する傾向がある。陰謀論は彼らの「なんとなくしっくりくる」感覚を刺激するため、信じやすい。
論理的思考ができる人は、「自分が間違っているかもしれない」と考えられる。しかし、境界知能の人はこの自己修正能力が弱く、以下のような思考になりやすい。
「反証を提示されても理解できない」
→ 例えば、「この論文ではワクチンが安全だと証明されているよ」と言われても、専門用語が多くて読めない。
→ 「難しいから信じられない!」という結論になる。
「反証は陰謀の一部だと思い込む」
→ 「専門家が言っているから正しい」という考え方ができず、むしろ「専門家=政府の犬」という陰謀論を強化してしまう。
このように、論理的思考ができないことで、陰謀論の「閉じた論理」にますますハマりやすくなる。
陰謀論の魅力の一つに、「自分で真実に気づいた感覚」がある。境界知能の人は、論理的な検証ではなく、感覚的な思考で「わかった!」となりやすい。
例:「大手メディアは信用できない!だから俺はネットで真実を探す!」
→ 実際には、陰謀論者の動画やブログの内容をそのまま信じているだけ。
→ しかし、自分では「自分で考えた」と錯覚する。
ここまで述べたように、境界知能の人は陰謀論にハマりやすい要素を持っている。しかし、境界知能の人すべてが陰謀論を信じるわけではない。
なぜなら、以下の要因も関係するからである。
特に境界知能の人に多い傾向として、「有名人の発言だから本当」「ジャーナリスト(あるいは弁護士)が言ったから正しい」という 権威への盲信 の思考パターンがある。これは 「権威バイアス」 と呼ばれ、論理的に考えることを放棄してしまう原因になりやすい。
「有名人が言ったから正しい」と信じる思考の問題点
特に境界知能の人に多い傾向として、「有名人の発言だから本当」「ジャーナリストが言ったから正しい」という 権威への盲信 の思考パターンがある。これは 「権威バイアス」 と呼ばれ、論理的に考えることを放棄してしまう原因になりやすい。
例:
❌ 「ジャーナリストの〇〇さんが『新型ウイルスは人工的に作られた』と言っていたから間違いない!」
✅ 「ジャーナリストが言っているだけでは証拠にならない。本当に科学的な根拠があるか調べよう。」
✅ ①「誰が言ったか」ではなく「何を言っているか」で判断する
✅ ② 反対意見もチェックする
✅ ③ 有名人の発言でも「その分野の専門家か?」を考える