大河ドラマ「べらぼう」に「献上本」というものが登場します。
献上本(けんじょうぼん)とは、天皇や将軍、大名、公家などの高位の人物に献上された特別な本を指します。単なる書物ではなく、装丁や内容が特別に仕立てられ、献上する相手にふさわしい格式を持つものとされています。
献上本は、古くは公家や武士が自らの権威を示すために編纂し、献上したものが多くありました。また、学者や文人が自身の研究や著作を献本することもあり、文化の発展にも寄与しました。特に江戸時代には、幕府に対する献上品の一つとして、豪華な装丁の書物が作られ、将軍家や大名家に納められることがありました。
NHK大河ドラマ『べらぼう』では、江戸時代の出版文化を牽引した蔦谷重三郎が登場し、ある絵本を上様(将軍)に献上する場面があります。
物語の中で、蔦谷重三郎たちは『青桜美人合姿鏡(あおざくらびじんあわせすがたかがみ)』という豪華な絵本を制作し、それを献上本とするため、田沼意次の屋敷を訪れます。田沼意次は、当時の幕府の権力者であり、文化振興にも関心を持っていた人物です。
この『青桜美人合姿鏡』は、美しい装丁と精緻な絵が描かれた豪華本であり、将軍への献上にふさわしい一冊でした。そして、実際にこの本が上様に献上されると、それは「献上本」として呼ばれるようになったのです。
このエピソードは、当時の出版文化や権力者への献本の習慣をよく表しており、献上本が単なる書物ではなく、政治的・文化的な意味を持っていたことを示しています。
献上本は、単なる高級な本というだけでなく、文化の発展や権力者との関係構築にも重要な役割を果たしていました。特に江戸時代の出版文化が発展する中で、献上本は職人技術の粋を集めた芸術作品としても評価されました。
現代においても、献上本という概念は残っており、特別に作られた書籍が皇室や国家元首に献上されることがあります。そのため、献上本は歴史的にも文化的にも重要な役割を果たし続けているのです。
献上本とは、権威ある人物に献上される特別な本であり、江戸時代には将軍や大名に対する献上品としても重要視されていました。『べらぼう』に登場する『青桜美人合姿鏡』のエピソードは、当時の出版文化や献上本の意味をよく伝えるものであり、文化と政治が交錯する場面を描いています。
このように、献上本は単なる書物ではなく、権力や文化を象徴する存在として、歴史の中で重要な役割を担ってきたのです。