アメリカのメジャーリーグ(MLB)の試合中、ベンチに座る選手たちが無心で何かを口に入れ、床には殻が散らばっている…そんな光景を見たことはありませんか?
実は彼らが食べているのは、ひまわりの種(sunflower seeds)。
日本ではあまり一般的でないこの習慣には、健康面、メンタル面、そして文化的背景が深く関係しています。
この記事では、メジャーリーガーがなぜひまわりの種を好んで食べるのか、そしてその起源や関係する人物・チームについても詳しく解説していきます。
ひまわりの種を食べる習慣は、1950年代~60年代にかけて徐々に広まり始めたと言われています。
当時のMLBでは噛みたばこが主流でしたが、健康への影響やイメージの悪化を理由に、徐々に規制が進みます。そんな中、選手たちはよりヘルシーな代替品を探し始め、ひまわりの種がその候補として台頭してきたのです。
実際、球場の売店でも次第にひまわりの種が置かれるようになり、ファンも選手に倣って食べるようになりました。特に1970年代以降、メジャーリーグと同様にファン文化も成熟し、観戦スタイルにまで影響を与えるようになっていきました。
また、栄養面でも利点があり、軽く食べられて長持ちする点も選手たちに好まれた理由のひとつです。殻を割ることで手間がかかるものの、その手間が逆に「野球らしさ」を感じさせる一種の演出としても受け入れられています。
この習慣を一躍有名にしたのが、1970年代のスーパースター**レジー・ジャクソン(Reggie Jackson)**です。
彼はオークランド・アスレチックスやニューヨーク・ヤンキースで活躍した伝説的な選手で、「Mr. October(ミスター・オクトーバー)」の異名でも知られています。
彼が試合中にひまわりの種を堂々と噛んでいた姿が中継で映され、多くの選手がこれに影響を受けました。のちには彼がプロデュースした「レジー・ブランド」の種まで登場したという逸話もあります。
このように、スター選手の行動が模倣されることで、文化として一気に広がっていったのです。レジー・ジャクソンは今でもこの「野球とひまわりの種」の文化的象徴とされており、アメリカでは彼のひまわりの種を食べる姿を描いたポスターやTシャツまで存在しています。
特にオークランド・アスレチックスなど、西海岸の球団を中心にこの習慣が定着し、徐々にMLB全体、さらにはマイナーリーグにまで広がっていきました。
現在では高校野球や大学野球の選手たちもベンチで種を噛む姿がアメリカでは珍しくありません。
また、マイナーリーグの若手選手にとっては、メジャー選手の所作を真似ることがステータスでもあるため、ひまわりの種を食べることがある意味で「憧れの行為」となっている側面もあります。
さらに、近年ではリトルリーグなどの少年野球でもこの文化が浸透しており、大人と同じように種を噛む子どもたちの姿もよく見られます。教育者や指導者の中には、過剰な模倣を避けるべきとの声もありますが、それほどまでに文化として強固になっている証拠とも言えるでしょう。
ベンチの床が種の殻で埋め尽くされることもありますが、これもまたアメリカ野球らしい風景のひとつです。
野球はプレーの合間に待機時間が多いスポーツ。選手たちはその間、集中力を保つために何かを口にしてリズムを取ろうとします。ひまわりの種はその“軽い刺激”として最適なのです。
また、ルーティンとしての効果もあり、一定のリズムを持って殻を割る行為が、メンタル面での安定にもつながります。プレッシャーのかかる場面やピンチのときでも、口の中に種があることで冷静さを取り戻せる選手も多いといわれています。
かつて主流だった噛みたばこは、健康リスクやイメージの悪化で使用が制限されるようになりました。ひまわりの種はその代替として最も自然で、しかも合法的な選択肢となっています。
現在ではMLBの多くの球場でたばこの使用が禁じられているため、ひまわりの種はまさに「公式に許された口寂しさ対策」と言えるでしょう。さらに、スポンサー企業やファン層に配慮した「清潔感」のある選択としても重宝されています。
ひまわりの種には以下のような栄養素が含まれています:
また、塩味の種は夏場の塩分補給にも適しており、熱中症対策にもなります。最近ではフレーバー付き(スパイシー、バーベキュー、ランチドレッシング味など)も人気を集めており、味のバリエーションが楽しめることも魅力の一つです。
さらに、油分が多いため腹持ちがよく、長時間の試合中に少しずつ食べられる点も評価されています。
今や、ひまわりの種は「野球=サンフラワーシード」と言っても過言ではないほど、アメリカ球界に浸透しています。選手だけでなく、観客も球場で種を噛みながら観戦するのが定番スタイルです。
実際、MLB公認のフレーバー付きひまわりの種なども発売されており、野球文化と食品業界が密接に結びついていることがうかがえます。球場で売られるお菓子や軽食の中でも、ひまわりの種はユニークなポジションを確立しています。
選手たちは口の中に種を複数入れ、舌と歯を使って一粒ずつ殻を割り、中身だけを取り出して食べます。
殻はベンチの床にペッと吐き出すのが定番で、これもまたアメリカ野球の「風物詩」なのです。
この“器用な食べ方”ができるようになると、「一人前の野球人」として認められる…というジョークさえあるとか。試合中、短時間でどれだけ多くの種を処理できるかという「種噛み競争」が行われることもあります。
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ベンチでひまわりの種を噛みながら仲間と談笑する姿は、映画やドキュメンタリーでもよく見られる光景。
その映像が繰り返し放送されることで、ひまわりの種を食べることが「野球っぽい」行動として定着していきました。
野球を題材にしたアニメやドラマでも、このシーンが出てくると「リアルだ」と思われるほど、象徴的な文化になっています。球団のPR映像やファン向けのSNS投稿にも、選手が種を噛む姿が演出として取り入れられるほどです。
メジャーリーガーがひまわりの種を食べる理由をあらためてまとめると:
これらの理由が複合的に絡み合い、いまやMLBだけでなく、世界中の野球人にとっての“ベンチのお供”となっているのです。
ひまわりの種は日本でも輸入品やオンラインショップで購入可能です。
最近ではアメリカのMLB公式ショップでもひまわりの種が売られており、球団ロゴ入りパッケージなども存在します。ちょっとしたお土産にもおすすめです。また、日本国内でも健康志向の高まりにより、ひまわりの種の人気がじわじわと高まっており、スーパーや自然食品店でも見かけるようになってきました。
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📣 次回の野球観戦は、ひまわりの種片手にアメリカ流で楽しんでみては?
野球というスポーツの奥深さと、文化としての広がりが、たった一粒の「種」から見えてくるかもしれません。