アメリカ国債(U.S. Treasuries)は、世界中の政府や中央銀行、民間投資家が安全資産として保有する金融商品の代表格です。ドル建てであり、世界最大の経済を持つアメリカ政府が発行することから「信用度が非常に高い」とされてきました。
この記事では、2025年1月時点の最新データを基に、アメリカ国債を最も多く保有している国々のランキングを紹介し、それぞれの国の動向や背景を解説していきます。
米国財務省によると、2025年1月時点で外国勢による米国債の保有総額はおよそ 8兆5,260億ドル に達しています。これは前年同月(2024年1月)の約7兆9,500億ドルから増加しており、依然として世界中の投資家にとって「買いたい資産」であることを示しています。
順位 | 国・地域 | 保有額(十億ドル) | 前年比増減率 |
---|---|---|---|
1 | 🇯🇵 日本 | 1,079.3 | +1.8% |
2 | 🇨🇳 中国 | 760.8 | +0.2% |
3 | 🇬🇧 英国 | 740.2 | +5.0% |
4 | 🇱🇺 ルクセンブルク | 409.9 | +18% |
5 | 🇰🇾 ケイマン諸島 | 404.5 | +23% |
6 | 🇨🇦 カナダ | 377.7 | +29% |
7 | 🇧🇪 ベルギー | 350.8 | 情報未公開 |
8 | 🇮🇪 アイルランド | 335.4 | +31% |
9 | 🇫🇷 フランス | 329.7 | 情報未公開 |
10 | 🇨🇭 スイス | 301.1 | +6% |
日本は長年にわたり、世界最大の米国債保有国であり続けています。日本の保有額は 1兆793億ドル に達しており、2位の中国を大きく引き離しています。
国内の低金利環境:日本の国債は長年ゼロ金利またはマイナス金利が続いており、資金を米国債に振り向けたほうが高い利回りを得られる。
円高抑制の側面:ドル建て資産の保有を増やすことで、為替介入的な効果も期待される。
リスク回避志向:安全資産としての米国債は、安定性を求める日本の年金基金や保険会社にとって理想的。
中国はかつて日本を上回る米国債の最大保有国でしたが、近年は保有額が減少傾向にありました。2025年1月の保有額は 7,608億ドル と微増していますが、長期的には慎重な姿勢が続いています。
米中対立の長期化:貿易摩擦や台湾問題など、米中の政治的緊張が続く中、米国資産の依存を減らす動き。
外貨準備の多様化:ユーロや金、人民元建て資産へのシフト。
人民元国際化の加速:ドルからの脱却は中国の国家戦略の一部とされています。
英国の米国債保有額は 7402億ドル と、前年比5%の増加。ロンドンが世界最大級の金融センターであることから、多国籍銀行やファンドを通じた投資活動が反映されています。
EU離脱後の戦略的資産移動
外資系ファンドによる運用拠点としての役割
ドル建て資産への再シフト
これらの国・地域は、いずれもタックスヘイブンとして知られ、投資ファンドやグローバル企業の資金が集中しています。
ケイマン諸島:4045億ドル(+23%)
ルクセンブルク:4099億ドル(+18%)
アイルランド:3354億ドル(+31%)
投資家自身はアメリカ本土や他国に所在していても、こうした金融ハブを経由して米国債を購入しているケースが多いため、統計上はこれらの国の保有としてカウントされます。
米国債は以下のような理由から、外国政府や機関投資家にとって極めて魅力的な資産です。
✅ 安全性:世界最大の経済規模を持つアメリカ政府の信用力。
✅ 流動性:いつでも売買可能な巨大な市場規模。
✅ 金利収益:日本や欧州よりも高い利回り。
✅ 為替リスクの緩和:ドルを外貨準備として持つ意義。
米国債は安全資産とされていますが、リスクがゼロというわけではありません。
アメリカの財政赤字の拡大:金利上昇圧力や格付けの懸念。
政府債務上限問題:たびたび政治的に懸念されるデフォルトリスク。
金利変動リスク:FRBの金融政策により保有資産の評価損が出る場合も。
地政学的リスク:台湾・中東・ウクライナなどが影響を与える可能性。
日本にとって、米国債は単なる投資先ではありません。
🔁 経常黒字の運用先:輸出で得た外貨の運用先として機能。
💹 為替操作のツール:円安・円高を間接的に調整可能。
🤝 日米経済関係の安定化:米国に対する「信用供与」でもある。
アメリカ国債の保有国ランキングを見ることで、国際金融の力学や各国の戦略的な経済運用が見えてきます。日本や中国といった大国だけでなく、小国やタックスヘイブンも重要なプレイヤーとして存在感を示しています。
今後も米国の財政政策、世界の金利動向、地政学リスクなどが各国の米国債戦略に影響を与えることは間違いありません。