私たちが日常的に使っている暗証番号(PINコード)。
銀行カードやクレジットカード、スマートフォン、電子マネーなど、さまざまな場面で必要になりますが、その多くが「4桁」で構成されています。
「なぜ4桁なの?」
「もっと長い方が安全じゃないの?」
そう思ったことはありませんか?
実はこの「4桁」には、覚えやすさ、技術的制約、安全性のバランス、そして意外な歴史的背景が隠されています。
この記事では、「暗証番号が4桁である理由」を4つの視点から詳しく解説し、あわせて現代の動向や今後の進化についても触れていきます。
暗証番号が4桁になった理由として、よく語られる有名なエピソードがあります。
1960年代後半、ATM(現金自動預け払い機)を発明したジョン・シェパード=バロン(John Shepherd-Barron)氏は、当初「6桁の暗証番号」を考案していました。
しかし、開発中に奥さんにテストしてもらったところ…
「6桁なんて覚えられない。4桁が限界。」
という言葉が返ってきたのです。
このエピソードに強く影響され、最終的に彼は「4桁がユーザーにとってちょうどいい」と判断しました。
つまり、世界中の人々が現在使っている「4桁の暗証番号」は、1人の奥さんの“記憶力”に基づいて決まったとも言えるのです。
この事実は非常に興味深く、技術だけでなく“人間らしさ”や”人間の能力”が深く関わっていたことを物語っています。
4桁の数字は、「0000」から「9999」まで、ちょうど10,000通りの組み合わせが可能です。
この数は、セキュリティとしての観点でも、次のようなメリットを持っています:
特に初期のATMには「3回間違えるとロックされる」機能があったため、4桁であっても実際には突破が非常に困難でした。
さらに、10,000通りを可能にする「4桁の数字」というのは人間の記憶力的にも「覚えられるギリギリの上限」とも言われています。
1970〜1980年代のATMやカード端末のハードウェアは、現在のように高性能ではありませんでした。
画面はモノクロで文字数も制限され、キーパッドもシンプルな12キー構成(数字0〜9+決定・取消)でした。
そのため、入力に時間がかかる長い番号は非現実的であり、銀行や金融機関としても、トラブル防止の観点から「短くて覚えやすい4桁」を採用したのです。
また、当時のシステムはメモリ容量も限られており、ユーザー情報の記録にも制限がありました。
4桁の数字列なら記憶・管理・照合の面でも効率がよく、銀行の運用面にも好都合でした。
現代では、スマートフォンやネットバンキングで6桁以上のパスコードや生体認証(指紋、顔)が主流になりつつあります。
しかし、ATMや多くの金融サービスでは今でも4桁のPINコードが標準です。
これは次の理由によります:
特に高齢者やテクノロジーに慣れていない人々にとって、4桁のシンプルなコードは非常に扱いやすく、銀行としても大規模な変更を避けている側面があります。
10,000通りあるとはいえ、ユーザーの多くが使いがちな番号は限られており、セキュリティリスクも存在します。
ある調査によると、以下のような番号が特に多く使われているそうです:
このような推測されやすい番号を使っていると、万が一カードを盗まれた際に不正利用されやすくなります。
そのため、金融機関では現在、以下のような対策が行われています:
今後、テクノロジーの進化に伴って、暗証番号は大きく変化していくと考えられています。
これにより、暗証番号そのものが使われなくなる日も来るかもしれません。
とはいえ、世界中の多くのインフラが今なお「4桁」で動いていることを考えると、その完全な移行には数十年単位の時間がかかる可能性もあるでしょう。
暗証番号が4桁である理由は、単なる偶然や惰性ではなく、
など、複数の要因が絶妙に組み合わさった結果です。
私たちが今でも使っている「4桁」というフォーマットは、実は**“人間中心設計”の先駆けとも言える設計思想**だったのです。