2025年4月13日現在、開催が迫る大阪・関西万博(Expo 2025 Osaka, Kansai, Japan)。世界150カ国以上・25以上の国際機関が参加を表明しているこの一大イベントは、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、世界中から注目を集めています。
しかし、当初参加予定だったロシアは、すでに正式に出展を辞退しており、ロシア館は設置されないことが確定しました。万博の理想とは裏腹に、地政学的な緊張がその影を落としているのです。
この記事では、ロシア館不参加の経緯、背景、関西万博全体への影響、そして今後への展望を詳しく掘り下げます。
ロシアは元々、2025年の大阪・関西万博において大規模なパビリオン「ロシア館」の出展を計画していました。その構想には以下のような要素が含まれていたとされています:
宇宙開発や北極圏探査など、ロシアの先端科学技術
トルストイ、チャイコフスキー、バレエなどの文化的資産
エネルギー・原子力・医療技術分野での国際協力
ソ連時代から続く“科学大国ロシア”のイメージを前面に押し出すことで、技術立国としての実力を世界に示す絶好の機会でもありました。
しかしながら、この構想は実現に至りませんでした。
2023年11月28日、フランス・パリで開催された博覧会国際事務局(BIE)の総会にて、ロシアは大阪・関西万博への正式な不参加を表明しました。
ロシア代表団の説明によると、辞退の理由は以下の通りです:
主催者(日本側)との十分なコミュニケーションが確保できなかった
一部参加国の政治的な圧力・敵対的態度への懸念
現在の国際情勢が中立的な場の提供を難しくしていると判断した
この辞退表明によって、ロシア館の出展は白紙撤回となり、建設計画も完全に停止されました。
ロシアの出展辞退の背後には、2022年から続くウクライナ侵攻が深く関係しています。国際社会ではロシアに対する経済制裁や外交的孤立が続き、G7各国をはじめとする多くの国々がロシアとの協調を避ける傾向を強めています。
万博という「平和と共創」を掲げる国際イベントにおいて、ロシアの存在が参加各国との摩擦の原因となることを回避するため、ロシア側が自主的に辞退した可能性もあります。
なお、対照的にウクライナは万博参加を継続しており、英国館などで戦時下の社会復興や経済発展の可能性を世界にアピールする展示を予定しています。
ロシア以外にも、メキシコ、エストニア、エジプト、トルクメニスタンなどが関西万博からの出展を辞退しています。これらの国の辞退理由は、以下のように分類できます:
建設費の高騰(物価上昇・資材不足)
輸送・ロジスティクス面の困難
政治的中立性への懸念
国内の予算問題
つまり、ロシアのような外交問題以外にも、様々な課題が各国の出展判断に影響しているのが現実です。
日本国際博覧会協会(Expo 2025協会)は、各国の事情を尊重しつつ、万博全体としての成功を目指す姿勢を貫いています。公式声明では、**「政治的対立を持ち込まない中立な国際交流の場を維持する」**とし、特定の国の辞退によってイベントの価値が損なわれることはないとの見解を示しています。
事実、150以上の国・地域と25の国際機関の参加が見込まれており、万博は依然として世界規模のイベントとしての期待が高まっています。
ロシア館の不参加は、単なる一国の辞退以上の意味を持ちます。それは、地政学的リスクが文化・経済のイベントにも直接的な影響を及ぼす時代であるという現実の象徴でもあるのです。
かつて冷戦期にも「万博」は外交の舞台であり、国の威信をかけた技術競争の場でもありました。今回の不参加によって、ロシアはその舞台から自ら姿を消す選択をしたとも言えます。
2025年の関西万博は、世界がパンデミックや戦争、エネルギー危機、気候変動といった課題に直面する中で開催される「試される万博」と言えるでしょう。
ロシア館の不参加は残念ではあるものの、それ以上に世界の多くの国々が手を取り合い、未来社会の可能性を共に描こうとしていることこそが、この万博の真の意義です。
関西万博を通じて、国境や政治を越えた協力の姿勢が少しでも世界に広がることを願ってやみません。