ヨーロッパで停電・サイバー攻撃？

スペイン・ポルトガル・南フランスで大規模停電・原因はサイバー攻撃なのか

2025年4月28日、スペインとポルトガルを中心に、南フランスを含む広い地域で大規模な停電が発生しました。
この停電は一時、数千万人に影響を与え、交通機関や通信、空港運営にまで深刻な支障をきたしました。
その背景には一体何があったのでしょうか？サイバー攻撃の可能性も指摘される中、詳しく見ていきます。

停電の概要

• 🛑 発生日時：2025年4月28日 午後12時33分（スペイン時間）
• 🛑 影響地域：スペイン全土、ポルトガル全土、アンドラ、南フランスの一部地域（バスク地方、カタルーニャ地方、オクシタニー地方など）
• 🛑 主な影響：
  • 地下鉄・鉄道の停止（マドリード、バルセロナ、リスボン、ポルトなど主要都市で）
  • 空港の遅延・一部閉鎖（マドリード・バラハス空港、リスボン空港、バルセロナ・エル・プラット空港）
  • 携帯電話・インターネットの通信障害（主要キャリアで大規模な影響）
  • 信号機の停止による交通混乱（都市部で渋滞多発）
  • 病院の非常電源への切り替え（手術延期や外来業務の制限）

停電による経済的な影響も懸念されており、特に観光業や物流業界では一時的な損失が生じたと報告されています。

サイバー攻撃の可能性は？

停電直後から、スペインの国家サイバーセキュリティ機関（INCIBE）をはじめとする当局は、サイバー攻撃の可能性も含めた原因調査を開始しました。

• 🧠 スペイン政府の発表：「いかなる可能性も排除しない」と慎重な姿勢を表明。
• 🔍 現時点の調査結果：サイバー攻撃の明確な証拠はまだ見つかっていないと報告。
• 🔐 ポルトガル国家サイバーセキュリティセンター：現在のところ、攻撃を示唆する兆候は確認されていないと発表。

サイバーセキュリティの専門家たちは、仮にサイバー攻撃だった場合でも、高度な国家支援型のハッキングが関与している可能性があると指摘しています。今後も各国のインフラに対する防御体制の強化が求められています。

他に考えられる原因

停電の背景には、技術的・自然的な要因が複合的に関与している可能性もあります。

• 🌡️ 大気現象
  ポルトガルの電力会社RENによると、極端な温度変化に伴う大気の異常振動が高電圧送電線に悪影響を与えた可能性が指摘されています。この現象は非常に稀で、予測が難しいため、送電網全体への影響が一気に広がった可能性が高いとみられています。
• 🔥 火災説
  一部メディアではフランス南西部の送電線周辺で火災が発生したとの報道もありましたが、RTE（フランス送電公社）は火災による直接的な影響を否定しています。
• 🛠️ 設備トラブル説
  老朽化したインフラの存在や、近年の電力需要増加による送電設備への負荷も、今回の大規模障害に寄与した可能性があると専門家は分析しています。特に再生可能エネルギーの普及に伴い、送電網の複雑化が進んでいたことも背景にあると考えられます。

停電の復旧状況

停電発生から数時間以内に、スペインとポルトガルの主要都市では電力供給が段階的に復旧しました。
復旧作業には数千人規模の技術者と緊急対応部隊が投入され、特に医療機関や空港など重要施設への電力供給を最優先に行われました。

一方で、地方部では送電線網の複雑さから復旧が遅れるケースもあり、ポルトガル当局は「完全復旧までに最大1週間を要する」としています。

通信インフラについても、主要キャリアは48時間以内にサービスをおおむね正常化しましたが、一部では影響が長引く地域も報告されています。

なぜ複数国にまたがる大規模停電になったのか？

今回の停電がスペイン・ポルトガルだけでなく、南フランスやアンドラにまで広がった理由は、ヨーロッパの電力網が高度に相互接続されているためです。

• ⚡ ヨーロッパ大陸系統（Continental European Grid）とは？

この送電網は、複数国をまたいで電力を融通し合う仕組みになっており、電力需給の安定やコスト削減に大きなメリットをもたらしてきました。しかし一方で、一部地域のトラブルが連鎖的に波及するリスクも内包しています。

🧩 仮説となる流れ

1. スペイン内陸部で極端な温度変化に伴う「大気振動」が発生。
2. これにより高電圧送電線に異常振動が生じ、系統周波数（50Hz）が急激に乱れる。
3. 周波数の乱れにより、ヨーロッパ全体の電力網で自動的に保護装置が作動。
4. システム防護のため、負荷遮断（ブラックアウト）が発生し、周辺国にも波及。

補足情報： こうした大規模ブラックアウトは、2006年にもドイツ北部で発生し、同様に複数国に停電が拡大した例があります。

まとめ：サイバー攻撃か、自然現象か

今回のヨーロッパ大停電は、サイバー攻撃の可能性も依然として完全には否定できないものの、現時点では**「自然現象＋技術的要因の複合事故」**という見方が有力です。

ヨーロッパ諸国が進めてきた電力網の一体化は、経済合理性と持続可能なエネルギー政策にとって大きな利点をもたらしましたが、それと引き換えにリスクの共有化という重大な課題も顕在化しました。

今後は、より強靭なグリッド設計、スマートグリッド技術の導入、地域ごとの分散型電源の強化などが再発防止策として議論されることになるでしょう。

また、仮にサイバー攻撃でなかったとしても、インフラ防衛の重要性が改めて強く認識された今回の停電。今後の調査報告、そしてヨーロッパ全体のエネルギー安全保障政策の動向に注目していきたいところです。