かつてはイノベーションの象徴として称賛されていた電気自動車メーカー「テスラ」。そのCEOであるイーロン・マスク氏は、民間宇宙開発企業スペースXや、インターネットサービスのStarlinkなどでも注目を集めてきました。
しかし、2025年に入り、テスラに対する世界的なデモやボイコット運動が激化しています。欧米各地のテスラ販売店の前で大規模な抗議活動が行われ、SNSでは「#BoycottTesla」「#ElonIsPoison」といったハッシュタグが拡散されています。
いったい何が起きているのでしょうか?テスラに対するデモはなぜ起きているのでしょうか?
この記事では、その背景と理由を詳しく掘り下げていきます。
2025年3月末、アメリカの複数都市で同時多発的にテスラに対する抗議活動が展開されました。サンフランシスコでは、数百人規模のデモ隊がテスラのショールーム前に集結。プラカードには「Elon is poison(イーロンは有害だ)」「Democracy, not Muskocracy(民主主義を、マスク支配ではなく)」といった強いメッセージが並びました。
この動きはアメリカにとどまらず、ドイツ、フランス、イギリス、スウェーデン、カナダ、そして日本でも小規模ながら抗議活動が確認されています。
テスラに対する反発の中心には、CEOイーロン・マスク氏の政治的な関与と物議を醸す言動があります。
マスク氏は2025年、アメリカの新設政府機関「政府効率化省(Department of Government Efficiency)」、通称DOGEの長官に就任。主な任務は、連邦政府の官僚制度のスリム化とコスト削減です。
彼は短期間で数万人規模の連邦職員の解雇を断行し、社会保障関連の部署にも大胆な予算カットを行いました。
これは「小さな政府」を志向する一部の政治勢力には歓迎された一方で、労働者階級や中間層には強い不安と怒りを呼び起こしました。
さらにマスク氏は、自身が所有するSNS「X(旧Twitter)」上でしばしば極端な政治的意見や侮辱的発言を繰り返してきました。
これらの投稿は拡散されるたびに大きな波紋を呼び、マスク氏個人に対する評価だけでなく、テスラという企業全体へのイメージ悪化にも直結しています。
テスラのショールームや充電ステーション前では、以下のようなスローガンや抗議活動が確認されています:
こうした声の根底には、テスラが単なるEVメーカーではなく、**「マスク氏の思想や行動を象徴する企業」**と捉えられている現状があります。
抗議運動や不買運動は、テスラの売上にも顕著な影響を与えています。
テスラのブランド価値はかつて非常に高かったものの、**「マスク氏への拒否感=テスラへの拒否」**という図式が定着し始めています。
また、ドイツの「ギーガファクトリー・ベルリン」では、テスラ従業員の大規模な不満表明が報告されています。
これに対してテスラは「業界標準以上の待遇」と主張していますが、現場の労働者たちの声には乖離があり、ヨーロッパの労働組合からの批判も高まっています。
SNSやオンラインフォーラムでは、消費者の間で以下のような意見が飛び交っています。
EVという地球環境に優しい選択をする中で、「企業の倫理性」も重視する層が増えており、その意味でもテスラは岐路に立たされています。
イーロン・マスク氏の政治的関与や攻撃的な発言、そしてその影響による社会的分断──。
それが、今日の「テスラ=抗議の対象」という構図を生んでいます。
テスラが今後も「革新的なEVメーカー」として人々の信頼を取り戻すには、単に製品の性能を追求するだけでなく、社会的責任・企業倫理・政治的中立性といった点にも向き合う必要があるでしょう。
この激しい抗議の波の中で、テスラはどのような舵取りを見せるのか。世界中がその動向に注目しています。