ドナルド・トランプ元大統領が政権を握っていた際、アメリカはWHO(世界保健機関)からの脱退や国連人権理事会からの脱退を表明し、国際機関に対する関与を縮小する動きを見せました。そのため、「アメリカが国際連合(UN)から脱退するのではないか」という懸念や憶測が浮上しました。しかし、実際にアメリカが国連を脱退する可能性はどの程度あるのか、またそれが実行された場合の影響について論じます。
国連憲章には、正式な「脱退」の規定がありません。これは、国際連盟の時代に日本やドイツなどが脱退し、国際秩序が崩壊した歴史を反映し、「一度加盟した国は基本的に脱退しない」ことを前提に作られたためです。
とはいえ、憲章の改正や政治的決断によって脱退を実行することは可能と考えられます。実際に、台湾(中華民国)は1971年に中国(中華人民共和国)と入れ替わる形で国連から脱退しています。
アメリカが国連を脱退する場合、議会(特に上院)の承認が必要になります。過去に共和党の一部議員が「国連脱退法案(American Sovereignty Restoration Act)」を提出したことがありますが、実現したことはありません。上院では国際協調を重視する議員も多く、簡単には可決されないと考えられます。
トランプ政権下では、「アメリカ・ファースト」を掲げ、国際機関への関与を縮小する政策が目立ちました。以下のような事例があります。
トランプ氏は再選を果たせば、国連への拠出金を削減するなどの圧力を強める可能性はありますが、完全な脱退まで踏み切るかは不透明です。
国連に対する批判は多いものの、アメリカは依然として国連を利用している側面もあります。
アメリカは国連の最大の資金拠出国であり、国連の予算の約**22%**を負担しています。もし脱退すれば、国連の運営は大きな打撃を受けるでしょう。
国連脱退は、アメリカの国際的な影響力を低下させる可能性があります。特にEUやNATO諸国との関係に悪影響を及ぼし、中国やロシアがその隙を突くことが予想されます。
アメリカ国内でも、国連脱退は大きな議論を呼ぶでしょう。保守派は賛成するかもしれませんが、民主党や国際協調派の共和党議員は強く反対するでしょう。そのため、国連脱退は政治的にもリスクが高い選択肢です。
現実的には、アメリカが国連を脱退する可能性は低いと考えられます。
トランプ氏が再選を果たした場合、「国連の改革」を求めて圧力をかける可能性はあるものの、脱退までは至らない可能性が高いでしょう。結局のところ、アメリカにとっても国連は**「コストはかかるが、失うと困る存在」**であり、完全に手放すメリットは少ないのです。
今後のアメリカの国際機関への関与については、2024年の大統領選挙の結果によって大きく左右されるでしょう。もしトランプ氏が再び政権を握れば、国連に対する圧力は強まるでしょうが、脱退までは至らない可能性が高いというのが現時点での合理的な見解です。