花魁・避妊方法

March 3, 2025 江戸時代

花魁・避妊方法

遊郭で花魁・遊女はどのような避妊方法を用いていたのか

江戸時代の吉原遊郭において、花魁や遊女たちは避妊のために様々な方法を試みていましたが、現代の視点から見ると、その効果は限定的であったと考えられます。避妊に関する知識が乏しく、また当時の社会では避妊という概念自体が確立されていなかったため、花魁たちは独自の工夫をするしかありませんでした。

避妊方法の実際

当時、避妊に関する科学的な知識や効果的な手段は限られていました。そのため、花魁や遊女たちは以下のような方法で避妊を試みていたとされています。

洗浄：性交後にトイレに行き、お湯で洗浄することで避妊を図る方法が一般的でした。しかし、これは感染症予防には多少の効果があったかもしれませんが、避妊効果はほとんど期待できませんでした。温水や酢を用いた洗浄も行われていたとされますが、精子を完全に排除することは難しく、妊娠を防ぐ効果はほぼありませんでした。
詰め紙：生理中でも接客を続けるために、紙を噛んで湿らせて膣内に詰める「詰め紙」という方法が用いられていました。これは避妊というよりも、生理中の出血を抑えるための手段でした。しかし、一部の遊女はこの方法を応用し、性交時に膣内に詰め物をすることで精子の侵入を防ごうと試みたとも言われています。
薬草の使用：一部の遊女は、漢方や民間療法として伝えられていた特定の薬草を摂取することで、妊娠を防ごうとしました。たとえば、月経を促進する作用があるとされた薬草（芍薬や艾葉など）を煎じて飲むことで妊娠を防ごうとする試みがありましたが、効果は不確かで、逆に健康に悪影響を及ぼすこともあったようです。
体位の工夫：性交時の体位を工夫することで妊娠を防ぐという考え方もありました。例えば、精子が子宮内に入りにくい姿勢を取ることで避妊できるという信念がありましたが、これも科学的な根拠には乏しく、確実な避妊手段とは言えませんでした。

迷信による避妊方法

江戸時代には、医学的根拠のない迷信的な避妊方法も多く信じられていました。遊女たちは確実な避妊手段を持たなかったため、こうした迷信にもすがるしかなかったのです。

呪術やお守り：特定の神社や寺で授与されたお守りを身につけることで妊娠を防げると信じられていました。また、陰陽道やまじないによる呪術を施すことで妊娠を防ぐとされ、特定の護符を肌身離さず持ち歩く遊女もいたと言われています。
特定の食材の摂取：妊娠しにくいとされる食材を積極的に摂取するという方法もありました。例えば、特定の魚や貝類を避ける、または妊娠を防ぐとされる苦い草や根を食べるといった迷信がありました。特に、シダ類の一種や特定の木の皮を煎じて飲むことで妊娠を防げると信じられていたようです。
特定の言葉を唱える：性交前後に特定の呪文や言葉を唱えることで妊娠を防ぐという迷信も存在しました。これは陰陽道や民間信仰の影響を受けたもので、特定の数字や音の組み合わせが妊娠を防ぐと信じられていたとされています。
月の満ち欠けを利用する：月の満ち欠けが女性の体に影響を与えると考えられており、新月の夜に性交をすると妊娠しにくいといった信仰がありました。また、特定の月齢の時に性交を避けることで妊娠を防げるという迷信もあったようです。

妊娠した場合の対応

もし花魁が妊娠してしまった場合、彼女たちは厳しい状況に直面しました。

中絶：当時の中絶方法は非常に危険で、母体に大きな負担をかけるものでした。薬草を用いた堕胎薬の服用や、強い刺激を与える物理的な方法が行われましたが、感染症や大量出血のリスクが高く、命を落とす遊女も少なくありませんでした。
出産後の処遇：妊娠が発覚すると、遊郭を追われることもありました。遊女は吉原の楼主の所有物のような立場であったため、妊娠が確認されると廃業させられるケースが多かったのです。遊郭では遊女の健康状態は厳しく管理されていたため、妊娠を隠すことはほぼ不可能でした。妊娠が発覚すれば即座に処遇が決まることが多く、出産に至る前に中絶を強いられるか、遊郭を追われる運命にあったと考えられます。
子供の処遇：生まれた子供は、遊郭では育てることができなかったため、寺や里子に出されることが一般的でした。母親である遊女は再び遊郭で働かされることがほとんどであり、子供と一緒に暮らすことはほぼ不可能でした。子供たちは養子に出されるか、寺院で育てられることが多かったとされています。