一目千本・意味
一目千本とは?その意味と由来
「一目千本(ひとめせんぼん)」という言葉には、いくつかの意味があります。一般的には、広大な桜並木や、ひと目で無数の桜を見渡せる景色を表す言葉として知られています。しかし、江戸時代にはこの言葉が特別な意味を持つ書物の題名としても使われていました。本記事では、「一目千本」の意味と、その歴史的な背景について詳しく解説します。
一目千本の一般的な意味
「一目千本」とは、一度に千本もの桜を見渡せるほどの壮大な桜並木を指す表現です。この言葉が特に有名なのは、宮城県の白石川堤に広がる桜並木「白石川堤一目千本桜」です。ここでは、白石川沿いに約8kmにわたり、1,200本以上の桜が植えられ、春になると圧巻の景色が広がります。人々がこの光景を「一目で千本の桜を見られるようだ」と称したことから、この名称が定着しました。
同様の表現として、奈良の吉野山の桜も「一目千本」と言われることがあります。吉野山では山の斜面に約30,000本もの桜が植えられており、ある地点から一度に数千本の桜を見渡せることがその由来です。
蔦谷重三郎が出版した『一目千本』とは?
「一目千本桜」は、江戸時代の大出版人・蔦谷重三郎(つたや じゅうざぶろう)が刊行した本の題名でもあります。この書物は、江戸・吉原遊郭とその遊女たちを紹介する「入銀本(いりがねぼん)」の一つです。
入銀本とは?
入銀本とは、豪華な装丁と精緻な挿絵を用いた遊郭関連の書籍のことを指します。主に、吉原の遊女たちの紹介や、遊郭の風俗・文化について記したもので、当時の遊里文化を知る貴重な資料とされています。
『一目千本桜』の内容
蔦谷重三郎が出版した『一目千本』は、吉原の遊女たちを「千本の桜」に見立て、まるで桜の名所を一望するかのように、美しい遊女たちを一覧できるという趣向の書物でした。その名の通り、一度に多くの遊女の姿を目にすることができることから、この題名がつけられたと考えられます。
「一目千本」は、もともとは「一度に千本の桜を見渡せるような壮観な桜並木」を意味する言葉でしたが、江戸時代には吉原の遊女たちを紹介する書物の題名としても使われたわけです。蔦谷重三郎の『一目千本』は、当時の遊郭文化を知る上で貴重な資料となっており、遊女たちの華やかさを桜に例えることで、その魅力を表現したものと考えられます。
このように、「一目千本」という言葉は、自然の景観と江戸文化の両方に関わる深い意味を持つ言葉なのです。