天皇の誕生日は、日本の祝日の中でも特別な位置付けを持っています。しかし、平成天皇(現・上皇)の誕生日である12月23日は、退位後祝日ではなくなりました。一方で、昭和天皇の誕生日である4月29日は「昭和の日」として現在も祝日です。この違いについて考えてみましょう。
天皇在位中は、その誕生日が「天皇誕生日」として祝日となります。しかし、天皇が退位されると、その誕生日は祝日ではなくなります。平成天皇が退位された2019年以降、12月23日は祝日から外れました。これは法令に基づくもので、天皇の誕生日が祝日であるのは「現天皇」に限られるためです。
一方、上皇となった後も元の天皇の誕生日を祝日とする特別な規定はありません。このため、平成天皇の誕生日が祝日でなくなるのは、制度上の自然な流れといえます。
昭和天皇の誕生日である4月29日が現在も「昭和の日」として祝日であるのは、昭和天皇が崩御された後の特別な経緯によるものです。
もともと昭和天皇在位中、4月29日は「天皇誕生日」として祝われていました。1989年に崩御された後、同日は「みどりの日」として祝日が維持されました。その後、2007年に「昭和の日」に改称され、昭和時代を振り返る日として定められています。
ここで注目すべきは、昭和という時代が日本の歴史において特別な意味を持つ時代だったことです。昭和は63年以上続き、日本の元号の中で最も長い期間をカバーしました。この間、日本は戦争という未曾有の試練を経験し、その後、戦後の復興や高度経済成長を成し遂げるという「激動の時代」を歩んできました。このように、昭和は日本の近現代史において特に重要な位置を占める時代であり、「昭和の日」はその象徴として存在していると言えるでしょう。
昭和という時代は前例のない程の63年以上続き、また終戦、戦後の復興、高度成長などまさに「激動の昭和」だったため、昭和天皇の誕生日が祝日というのは、昭和という時代が日本に取って特別な時代だったことの体現するためも言えます。
平成天皇の誕生日が祝日として残らないのは、平成という時代が昭和と比べて「振り返るべき特別な記念日」としての議論が深まっていないことが一因と考えられます。また、平成はまだ比較的最近の時代であるため、歴史的な振り返りをするには時期尚早だという見方もあるでしょう。
さらに、祝日として定めるには国会での議論と法改正が必要です。現在のところ、平成天皇の誕生日を祝日として定める動きは見られません。
祝日には、単に記念日を祝うだけでなく、時代や社会の意識が反映されます。昭和天皇の誕生日が「昭和の日」として祝日となった背景には、戦後日本の復興や成長を振り返る象徴的な意義がありました。一方で、平成時代がどう評価され、どのように振り返られるかは、今後の社会の動向次第といえます。
平成天皇の誕生日が祝日ではないのは、制度的な理由によるものです。一方、昭和天皇の誕生日が「昭和の日」として残るのは、昭和という時代の特別な意味が評価された結果です。この違いを理解することで、祝日が持つ象徴的な役割や社会の意識の変化を考えるきっかけとなるでしょう。