1964年、村上雅則投手がサンフランシスコ・ジャイアンツの一選手としてメジャーリーグのマウンドに立ったことにより、日本人選手によるMLB挑戦の歴史が幕を開けました。当時はまだ前例がなく、多くの人々がその活躍を半信半疑で見守っていましたが、村上の存在は「日本人でもメジャーで通用する」という新たな可能性を示しました。
それから半世紀以上が経ち、野茂英雄によるトルネード投法の衝撃、イチローのヒット量産、松井秀喜のワールドシリーズMVP獲得、大谷翔平の“二刀流”での歴史的活躍など、日本人選手たちは次々とMLBの舞台でインパクトを残してきました。投手・野手問わず、彼らは単なる話題の存在ではなく、チームの中核を担う実力者として評価されるようになり、その足跡は確実にメジャーリーグの歴史に刻まれています。
本記事では、これまでにMLBに在籍した歴代のすべての日本人選手について、ポジションや在籍期間、所属球団ごとに一覧形式でご紹介します。時代ごとの流れや選手の移籍先にも注目することで、日本とアメリカの野球のつながり、そして選手たちの挑戦と軌跡をより深く知ることができるでしょう。
近年では、MLB球団による日本人選手への注目度がますます高まっており、投手を中心に大型契約が相次いで結ばれています。大谷翔平のように投打で結果を出す選手はもちろんのこと、千賀滉大や山本由伸のようなエース級投手に対しても、複数球団が争奪戦を繰り広げ、年俸総額1億ドルを超える契約が実現する時代となりました。かつては「挑戦」という意味合いが強かったMLB移籍も、今や「世界最高の舞台でキャリアを築く」という、よりプロフェッショナルで現実的な選択肢として定着しています。
また、近年の傾向として、若年層からのスカウトやポスティングシステムを利用した20代前半でのメジャー移籍も一般的になりつつあります。育成やトレーニング体制の進化により、若いうちから海外でのプレーを視野に入れる選手も増加しており、今後はより多様なポジションやタイプの選手がMLBの舞台に登場してくると予想されます。
未来に目を向けると、日本の高校生や大学生、さらにはプロ入り直後の若手選手の中にも、メジャー志向を持つ人材が数多く存在しています。NPBとMLBの間での人材の流動性は今後さらに加速し、両リーグの競争力や魅力を高める相乗効果が期待されます。加えて、国際大会での日本代表選手の活躍も、世界における日本野球の評価を押し上げており、日本人メジャーリーガーの今後の可能性は、これまで以上に明るいものとなっています。
選手名 | 守備 | 在籍年 | 所属球団(在籍年) |
---|---|---|---|
村上雅則 | 投手 | 1964–1965 | サンフランシスコ・ジャイアンツ(1964年 – 1965年) |
野茂英雄 | 投手 | 1995–2008 | ロサンゼルス・ドジャース(1995年 – 1998年、2002年 – 2004年) ニューヨーク・メッツ(1998年) ミルウォーキー・ブルワーズ(1999年) デトロイト・タイガース(2000年) ボストン・レッドソックス(2001年) タンパベイ・デビルレイズ(2005年) カンザスシティ・ロイヤルズ(2008年) |
マック鈴木 | 投手 | 1996–2002 | シアトル・マリナーズ(1996年、1998年 – 1999年) カンザスシティ・ロイヤルズ(1999年 – 2001年、2002年) コロラド・ロッキーズ(2001年) ミルウォーキー・ブルワーズ(2001年) |
長谷川滋利 | 投手 | 1997–2005 | アナハイム・エンゼルス(1997年 – 2001年) シアトル・マリナーズ(2002年 – 2005年) |
柏田貴史 | 投手 | 1997–1997 | ニューヨーク・メッツ(1997年) |
伊良部秀輝 | 投手 | 1997–2002 | ニューヨーク・ヤンキース(1997年 – 1999年) モントリオール・エクスポズ(2000年 – 2001年) テキサス・レンジャーズ(2002年) |
吉井理人 | 投手 | 1998–2002 | ニューヨーク・メッツ(1998年 – 1999年) コロラド・ロッキーズ(2000年) モントリオール・エクスポズ(2001年 – 2002年) |
木田優夫 | 投手 | 1999–2005 | デトロイト・タイガース(1999年 – 2000年) ロサンゼルス・ドジャース(2003年 – 2004年) シアトル・マリナーズ(2004年 – 2005年) |
大家友和 | 投手 | 1999–2009 | ボストン・レッドソックス(1999年 – 2001年) モントリオール・エクスポズ/ワシントン・ナショナルズ(2001年 – 2005年) ミルウォーキー・ブルワーズ(2005年 – 2006年) トロント・ブルージェイズ(2007年) クリーブランド・インディアンス(2009年) |
佐々木主浩 | 投手 | 2000–2003 | シアトル・マリナーズ(2000年 – 2003年) |
イチロー | 外野手 | 2001–2019 | シアトル・マリナーズ(2001年 – 2012年、2018年 – 2019年) ニューヨーク・ヤンキース(2012年 – 2014年) マイアミ・マーリンズ(2015年 – 2017年) |
新庄剛志 | 外野手 | 2001–2003 | ニューヨーク・メッツ(2001年、2003年) サンフランシスコ・ジャイアンツ(2002年) |
野村貴仁 | 投手 | 2002–2002 | ミルウォーキー・ブルワーズ(2002年) |
小宮山悟 | 投手 | 2002–2002 | ニューヨーク・メッツ(2002年) |
石井一久 | 投手 | 2002–2005 | ロサンゼルス・ドジャース(2002年 – 2004年) ニューヨーク・メッツ(2005年) |
田口壮 | 外野手 | 2002–2009 | セントルイス・カージナルス(2002年 – 2007年) フィラデルフィア・フィリーズ(2008年) シカゴ・カブス(2009年) |
松井秀喜 | 外野手 | 2003–2012 | ニューヨーク・ヤンキース(2003年 – 2009年) ロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイム(2010年) オークランド・アスレチックス(2011年) タンパベイ・レイズ(2012年) |
マイケル中村 | 投手 | 2003–2004 | ミネソタ・ツインズ(2003年) トロント・ブルージェイズ(2004年) |
松井稼頭央 | 内野手 | 2004–2010 | ニューヨーク・メッツ(2004年 – 2006年) コロラド・ロッキーズ(2006年 – 2007年) ヒューストン・アストロズ(2008年 – 2010年) |
大塚晶則 | 投手 | 2004–2007 | サンディエゴ・パドレス(2004年 – 2005年) テキサス・レンジャーズ(2006年 – 2007年) |
高津臣吾 | 投手 | 2004–2005 | シカゴ・ホワイトソックス(2004年 – 2005年) ニューヨーク・メッツ(2005年) |
多田野数人 | 投手 | 2004–2005 | クリーブランド・インディアンス(2004年 – 2005年) |
井口資仁 | 内野手 | 2005–2008 | シカゴ・ホワイトソックス(2005年 – 2007年) フィラデルフィア・フィリーズ(2007年、2008年) サンディエゴ・パドレス(2008年) |
藪恵壹 | 投手 | 2005–2008 | オークランド・アスレチックス(2005年) サンフランシスコ・ジャイアンツ(2008年) |
中村紀洋 | 内野手 | 2005–2005 | ロサンゼルス・ドジャース(2005年) |
城島健司 | 捕手 | 2006–2009 | シアトル・マリナーズ(2006年 – 2009年) |
斎藤隆 | 投手 | 2006–2012 | ロサンゼルス・ドジャース(2006年 – 2008年) ボストン・レッドソックス(2009年) アトランタ・ブレーブス(2010年) ミルウォーキー・ブルワーズ(2011年) アリゾナ・ダイヤモンドバックス(2012年) |
岩村明憲 | 内野手 | 2007–2010 | タンパベイ・デビルレイズ(2007年 – 2009年) ピッツバーグ・パイレーツ(2010年) オークランド・アスレチックス(2010年) |
岡島秀樹 | 投手 | 2007–2013 | ボストン・レッドソックス(2007年 – 2011年) オークランド・アスレチックス(2013年) |
松坂大輔 | 投手 | 2007–2014 | ボストン・レッドソックス(2007年 – 2012年) ニューヨーク・メッツ(2013年 – 2014年) |
井川慶 | 投手 | 2007–2008 | ニューヨーク・ヤンキース(2007年 – 2008年) |
桑田真澄 | 投手 | 2007–2007 | ピッツバーグ・パイレーツ(2007年) |
福留孝介 | 外野手 | 2008–2012 | シカゴ・カブス(2008年 – 2011年) クリーブランド・インディアンス(2011年) シカゴ・ホワイトソックス(2012年) |
福盛和男 | 投手 | 2008–2008 | テキサス・レンジャーズ(2008年) |
小林雅英 | 投手 | 2008–2009 | クリーブランド・インディアンス(2008年 – 2009年) |
薮田安彦 | 投手 | 2008–2009 | カンザスシティ・ロイヤルズ(2008年 – 2009年) |
黒田博樹 | 投手 | 2008–2014 | ロサンゼルス・ドジャース(2008年 – 2011年) ニューヨーク・ヤンキース(2012年 – 2014年) |
上原浩治 | 投手 | 2009–2017 | ボルチモア・オリオールズ(2009年 – 2011年) テキサス・レンジャーズ(2011年 – 2012年) ボストン・レッドソックス(2013年 – 2016年) シカゴ・カブス(2017年) |
川上憲伸 | 投手 | 2009–2010 | アトランタ・ブレーブス(2009年 – 2010年) |
高橋健 | 投手 | 2009–2009 | ニューヨーク・メッツ(2009年) |
田澤純一 | 投手 | 2009–2018 | ボストン・レッドソックス(2009年 – 2016年) マイアミ・マーリンズ(2017年 – 2018年) ロサンゼルス・エンゼルス(2018年) |
高橋尚成 | 投手 | 2010–2013 | ニューヨーク・メッツ(2010年) ロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイム(2011年 – 2012年) ピッツバーグ・パイレーツ(2012年) シカゴ・カブス(2013年) |
五十嵐亮太 | 投手 | 2010–2012 | ニューヨーク・メッツ(2010年 – 2011年) トロント・ブルージェイズ(2012年) ニューヨーク・ヤンキース(2012年) |
西岡剛 | 内野手 | 2011–2012 | ミネソタ・ツインズ(2011年 – 2012年) |
建山義紀 | 投手 | 2011–2012 | テキサス・レンジャーズ(2011年 – 2012年) |
ダルビッシュ有 | 投手 | 2012–現在 | テキサス・レンジャーズ(2012年 – 2017年) ロサンゼルス・ドジャース(2017年) シカゴ・カブス(2018年 – 2020年) サンディエゴ・パドレス(2021年 – 現在) |
青木宣親 | 外野手 | 2012–2017 | ミルウォーキー・ブルワーズ(2012年 – 2013年) カンザスシティ・ロイヤルズ(2014年) サンフランシスコ・ジャイアンツ(2015年) シアトル・マリナーズ(2016年) ヒューストン・アストロズ(2017年) トロント・ブルージェイズ(2017年) ニューヨーク・メッツ(2017年) |
川﨑宗則 | 内野手 | 2012–2016 | シアトル・マリナーズ(2012年) トロント・ブルージェイズ(2013年 – 2015年) シカゴ・カブス(2016年) |
岩隈久志 | 投手 | 2012–2017 | シアトル・マリナーズ(2012年 – 2017年) |
藤川球児 | 投手 | 2013–2015 | シカゴ・カブス(2013年 – 2014年) テキサス・レンジャーズ(2015年) |
田中賢介 | 内野手 | 2013–2013 | サンフランシスコ・ジャイアンツ(2013年) |
田中将大 | 投手 | 2014–2020 | ニューヨーク・ヤンキース(2014年 – 2020年) |
和田毅 | 投手 | 2014–2015 | シカゴ・カブス(2014年 – 2015年) |
村田透 | 投手 | 2015–2015 | クリーブランド・インディアンス(2015年) |
前田健太 | 投手 | 2016–現在 | ロサンゼルス・ドジャース(2016年 – 2019年) ミネソタ・ツインズ(2020年 – 2021年、2023年) デトロイト・タイガース(2024年 – 現在) |
大谷翔平 | 投手 / 指名打者 | 2018–現在 | ロサンゼルス・エンゼルス(2018年 – 2023年) ロサンゼルス・ドジャース(2024年 – 現在) |
平野佳寿 | 投手 | 2018–2020 | アリゾナ・ダイヤモンドバックス(2018年 – 2019年) シアトル・マリナーズ(2020年) |
牧田和久 | 投手 | 2018–2018 | サンディエゴ・パドレス(2018年) |
菊池雄星 | 投手 | 2019–現在 | シアトル・マリナーズ(2019年 – 2021年) トロント・ブルージェイズ(2022年 – 2024年) ヒューストン・アストロズ(2024年) |
秋山翔吾 | 外野手 | 2020–2021 | シンシナティ・レッズ(2020年 – 2021年) |
筒香嘉智 | 外野手 | 2020–2022 | タンパベイ・レイズ(2020年 – 2021年) ロサンゼルス・ドジャース(2021年) ピッツバーグ・パイレーツ(2021年 – 2022年) |
山口俊 | 投手 | 2020–2020 | トロント・ブルージェイズ(2020年) |
澤村拓一 | 投手 | 2021–2022 | ボストン・レッドソックス(2021年 – 2022年) |
有原航平 | 投手 | 2021–2022 | テキサス・レンジャーズ(2021年 – 2022年) |
鈴木誠也 | 外野手 | 2022–現在 | シカゴ・カブス(2022年 – 現在) |
加藤豪将 | 内野手 | 2022–2022 | トロント・ブルージェイズ(2022年) |
吉田正尚 | 外野手 | 2023–現在 | ボストン・レッドソックス(2023年 – 現在) |
千賀滉大 | 投手 | 2023–現在 | ニューヨーク・メッツ(2023年 – 現在) |
藤浪晋太郎 | 投手 | 2023–2023 | オークランド・アスレチックス(2023年) ボルチモア・オリオールズ(2023年) |
山本由伸 | 投手 | 2024–現在 | ロサンゼルス・ドジャース(2024年 – 現在) |
今永昇太 | 投手 | 2024–現在 | シカゴ・カブス(2024年 – 現在) |
松井裕樹 | 投手 | 2024–現在 | サンディエゴ・パドレス(2024年 – 現在) |
上沢直之 | 投手 | 2024–2024 | ボストン・レッドソックス(2024年) |
小笠原慎之介 | 投手 | 2024–現在 | ワシントン・ナショナルズ(2024年 – 現在) |
佐々木朗希 | 投手 | 2025–現在 | ロサンゼルス・ドジャース(2025年 – 現在) |
菅野智之 | 投手 | 2025–現在 | ボルチモア・オリオールズ(2025年 – 現在) |
青柳晃洋 | 投手 | 2025–現在 | フィラデルフィア・フィリーズ(2025年 – 現在) |
日本人選手たちのメジャーリーグ挑戦は、単なる一時的なブームではなく、今や野球界全体の流れの中にしっかりと組み込まれた動きとなっています。時代ごとにヒーローが現れ、その背中を見て育った次の世代がまた海を渡っていく──この流れは今後も続いていくことでしょう。
本記事でご紹介する日本人メジャーリーガーの一覧を通じて、それぞれの選手がどのようなキャリアを歩んできたのか、またどのような球団に所属していたのかを振り返ることで、日本とアメリカをつなぐ野球の歴史をあらためて感じていただければ幸いです。そしてこれからも、新たなスターの誕生と、日本野球のさらなる飛躍に期待しましょう。
1964年にサンフランシスコ・ジャイアンツでデビューした村上雅則は、日本人として初めてメジャーリーグの公式戦に出場しました。しかし実は、日本プロ野球の「ドラフト制度」が導入される前にアメリカへ渡ったため、彼のメジャー入りは完全に”イレギュラー”な道だったのです。
2023年オフにロサンゼルス・ドジャースと結んだ 10年総額7億ドル(約1,000億円) の契約は、メジャーリーグ史上最高額であり、スポーツ界全体でも世界記録。ちなみに、実際の支払いの多くは契約終了後に先送りされています(=”繰延契約”)。
意外かもしれませんが、野茂英雄が在籍したMLB球団は実に7球団(※実働6球団+再所属含む)で、歴代日本人メジャーリーガーの中で最多です。いくつものチームで先発を任され、最終的にはMLB通算123勝を挙げました。
松井秀喜は2009年、ニューヨーク・ヤンキースの一員としてワールドシリーズ制覇に貢献。第6戦での3打点などの活躍が評価され、日本人初のワールドシリーズMVPに輝きました。
大谷翔平をはじめ、バットやグローブ、スパイクなどを日本製で統一している選手は多く、アメリカのチームメイトにも「Made in Japan」製品のクオリティは評判です。実際、大谷の使用バット(アシックス製)は、メジャー内でも話題となりました。
これはやや珍事ですが、城島健司はMLBでキャッチャーとして出場するのが基本だったものの、シーズン終盤の消化試合で一塁を守ったことがあります(他に投手や捕手を兼任した例はほとんどありません)。
現時点での最年少MLBデビューは、佐々木朗希が記録を更新する可能性が高いとされています(※2025年にMLBデビュー予定)。これまでの記録は村上雅則の20歳(当時)です。