マイナー契約とは?
メジャーリーグのマイナー契約
佐々木朗希選手のドジャースとのマイナー契約を例に解説
佐々木朗希選手がMLBのロサンゼルス・ドジャースと「マイナー契約」を結んだニュースが注目を集めています。野球のマイナー契約とはどういうことなのでしょうか?
この契約形態について、日本ではあまり馴染みがないため、「マイナー契約とは何か?」について詳しく解説します。
野球のマイナー契約とは?
「マイナー契約とは、メジャーリーグ(MLB)の球団と結ぶ契約の一つですが、この契約では選手が直接メジャーリーグのチームのロースター(選手登録名簿)に登録されるわけではなく、MLB傘下のマイナーリーグでのプレーを前提とする形態を指します。選手はマイナーリーグで実績を積みながら、メジャー昇格を目指します。
*ロースター:選手名簿や登録選手一覧を指します。
理解のポイント
- マイナー契約の基本
- マイナー契約は、MLB球団と結ぶ契約ですが、メジャーリーグの「ロースター」に登録されない形態の契約です。
- マイナーリーグ(MLB傘下のリーグ)でのプレーが前提となります。
- ロースターとの関係
- 選手は「40人ロースター」に登録されず、メジャー昇格には40人ロースターへの追加が必要です。
- 昇格の流れ
- マイナーリーグでプレーしながら、実績を積んでメジャー昇格を目指す契約形態です。昇格すれば、メジャー契約に切り替わり、待遇面でも大きく変わります。
マイナー契約の特徴
- ロースター外の扱い
- 選手はメジャーリーグの「40人ロースター*」には登録されません。
- メジャー昇格には、40人ロースターへの追加登録が必要です。
- 年俸や待遇
- 年俸はマイナー契約時の水準で決定され、メジャーリーグでの契約と比較して低額です。
- メジャー昇格後は昇格時点でメジャー契約に切り替わり、メジャーリーグの待遇が適用されます。
- プレーの場
- 傘下のマイナーリーグ(AAA、AAなど)のチームでプレーします。
- メジャー昇格を目指し、実力を証明する場となります。
佐々木朗希選手のマイナー契約が持つ意味
佐々木選手のマイナー契約には、いくつかの重要な背景と目的があります。
1. ステップアップとしてのマイナー契約
佐々木選手のようにNPBで大きな成功を収めた選手であっても、メジャーリーグの環境に慣れるため、マイナー契約が選ばれることがあります。
- 適応期間の確保: アメリカ特有の試合日程、打者のスタイル、ボールやマウンドの違いに慣れる時間が必要です。
- 実力証明の場: メジャーで通用するかを評価される場でもあります。
2. チームの計画に基づく判断
メジャーのロースター枠には制限があるため、即戦力として位置付けられる選手であっても、チームの長期計画の中で段階的なデビューが計画されることがあります。
マイナー契約とメジャー契約の違い
以下に、マイナー契約とメジャー契約の主な違いを表で示します。
項目 |
マイナー契約 |
メジャー契約 |
ロースター登録 |
メジャーの40人ロースターには含まれない |
40人ロースターに含まれる |
年俸 |
マイナーリーグの基準(数万ドル程度) |
メジャー基準(最低約72万ドル) |
昇格時の待遇 |
昇格後、メジャー契約に切り替え |
常にメジャー契約 |
試合の舞台 |
マイナーリーグでのプレー |
メジャーリーグでのプレー |
なぜマイナー契約を選択するのか?
選手側の理由
- メジャーリーグへのステップアップを目指す選手にとって、マイナー契約は挑戦の第一歩となる。
- 必ずしも即メジャー昇格を目指さず、安定した環境で実力を発揮できる場を求める。
球団側の理由
- 即戦力として判断されない場合や、ロースター枠に余裕がない場合にマイナー契約を提示することが多い。
- チームの長期的な戦略や育成方針に沿った起用が可能になる。
佐々木朗希選手への期待
佐々木選手はNPBでの実績から、将来的にメジャーリーグでの活躍が大いに期待されています。今回のマイナー契約は、その実力を証明し、アメリカの野球文化に適応するための第一歩です。ドジャース傘下のマイナーリーグで結果を残し、昇格を果たせば、メジャーの舞台で日本人選手として新たな歴史を刻むことでしょう。
Q. 佐々木朗希はなぜ大谷選手や山本選手のようにメジャー契約を結べないのですか?
A. 佐々木朗希投手が大谷翔平選手や山本由伸選手のようにメジャー契約を結べない理由は、主に以下の2つの要因によります:
1. ポスティングシステムにおける規定
日本プロ野球(NPB)からMLBへの移籍には、ポスティングシステムが利用されます。この制度では、選手の年齢とプロ経験に応じた契約制限が適用されます。
- 25歳未満またはNPBでの6年未満の経験の場合
- **国際ボーナスポール(International Bonus Pool)**の対象となり、MLB球団が支払える契約金が制限されます。
- 最大契約金は
- 約490万ドル~650万ドル程度に制限されるため、長期の大型メジャー契約を結ぶことができません。
- 25歳以上またはNPBで6年以上の経験の場合
- ポスティングシステムを通じて、契約金や年俸に制限なくメジャー契約を結ぶことが可能です。
- 例えば、大谷翔平選手が25歳で渡米したときには、この制限を受けたため、メジャー契約ではなくボーナスプール内での契約となりました。一方、山本由伸選手は25歳以上で渡米しているため、メジャー契約を結ぶことができました。
佐々木朗希選手の場合
- まだ22歳(2024年時点)であり、NPBでのプレー年数も3年程度のため、国際ボーナスポールの対象となり、メジャー契約を結ぶ資格がありません。
2. MLB球団側の戦略
佐々木投手がマイナー契約を選択した背景には、球団側の育成や契約戦略も影響しています。
- 契約制限を踏まえた選択
- MLB球団としては、マイナー契約を通じて少ないコストで将来性のある選手を確保し、育成するメリットがあります。
- 特に、佐々木投手のように若く、成長の余地が大きい選手は、メジャーに即昇格させるよりも段階的に適応させる方が成功率が高いと考えられます。
- アメリカ野球への適応期間の必要性
- ボールの違い、マウンドの形状、打者のレベルの高さなど、NPBとは異なる環境に適応する期間が必要です。
- マイナーリーグでの実戦を通じて、その適応を進める意図があります。
国際ボーナスポールの制限
MLBでは、国際的なアマチュア選手(25歳未満かつプロ経験が6年未満の選手)に支払う契約金が制限されています。この制度のもとで、各球団には1年間に使える国際契約金の総額が決められています。
- 2024年の国際ボーナスポールの上限額は、各球団の状況に応じて約490万ドル~650万ドル程度に設定されます。
ドジャースの状況
ドジャースは大市場の球団であり、通常、国際ボーナスポールの上限額が少し低めに設定されています。しかし、今回の佐々木選手の契約において、球団は他球団からボーナスポール枠をトレードで獲得するなどして、650万ドルを確保した可能性があります。MLBではボーナスポール枠をトレードすることが許可されているため、このような調整が行われるのはよくあることです。
佐々木選手の契約金が範囲内である理由
- 650万ドルは国際ボーナスポールの最大額に近い
ドジャースは必要な枠を確保した上で、最大限の契約金を提示したと考えられます。
- 25歳未満の規定を遵守
佐々木選手はまだ22歳であり、この制限を受ける対象であるため、メジャー契約のような制限なしの大型契約は不可能です。
補足:契約金以外の報酬は?
マイナー契約の選手であっても、MLB球団が契約時に支払う金額は契約金(Signing Bonus)だけではなく、以下が付随することがあります:
- 年俸
マイナー契約の年俸は数万~数十万ドル程度ですが、メジャー昇格後には大幅に増加します。
- ポスティング費用
ドジャースは佐々木選手の契約金の一定割合(通常契約金の20%~15%程度)をNPBの千葉ロッテマリーンズに支払います。
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