世界中の野球ファンを熱狂させる大会――それが「WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)」です。
この大会では、普段はメジャーリーグやNPBなど異なるリーグでプレーしている選手たちが、国を背負って一つのチームとして戦う姿が大きな魅力となっています。
では、その「国を代表する」ためには、どのような条件が必要なのでしょうか?
今回は、WBC出場資格について、MLBが定めるルールを元に詳しく解説していきます。
血縁や出生地、国籍にまつわる基準など、意外と知られていない選手の参加資格に関する制度をわかりやすく紹介します。
WBCは、MLB(メジャーリーグベースボール)とMLB選手会、WBSC(世界野球ソフトボール連盟)が共同で主催する国際野球大会です。
2006年に第1回が開催され、以降、不定期ながら世界一を決める大会として親しまれています。
出場国は20か国以上で、世界各地の予選を勝ち抜いた国や、前回大会の成績に応じてシードされた国々が参加します。アメリカ、ドミニカ共和国、日本、韓国、キューバなどの野球強豪国だけでなく、チェコやイスラエルといった成長中の国も注目されています。
WBCで「どの国の代表として出場できるか」は、以下のような条件に基づいて決まります。MLBが定めた公式ルールでは、以下の7つのいずれかを満たしていれば、ある国の代表として出場可能です。
このように、血縁関係や出生地などを基準とした比較的柔軟な制度が採用されているのがWBCの特徴です。
このルールにより、選手が育った国と代表する国が異なるケースも珍しくなく、「アイデンティティ」「ルーツ」「家族の歴史」などがWBCでは重要なキーワードとなっています。
WBCでは、「その国で生まれていなくても」「親や祖父母がその国の出身であれば」代表になれる場合があります。これによって、例えばアメリカ育ちの選手が日本代表やイタリア代表として参加する、といったことも可能になります。
日本代表「侍ジャパン」に関しても、上記の国際基準を基に選手が選出されますが、実際には日本国籍を有している選手に限定されることがほとんどです。
これは、日本の野球界が一貫して「日本国籍による代表」を重視してきた背景があります。
とはいえ、過去には以下のような「外国生まれの日本人」が代表に選出された事例もあります:
とくにヌートバー選手は、「母が日本人」というルールを活かして2023年大会に出場し、多くの日本ファンの心を掴みました。
WBCでは、国籍を複数持っている選手(いわゆる二重国籍者)は、どちらの国でも出場資格があります。
ただし、一度ある国の代表として本大会に出場した選手は、次回以降に他国の代表になるには制限があるため、一定の手続きや承認が必要です。
予選にアメリカ代表として出場 → 本大会で別の国(例えばプエルトリコ)として出場
→ このような事例は公式の承認と規定の条件が揃えば可能です。
国際サッカーやオリンピックと比べると柔軟な面もあり、WBCならではの“ルーツ重視”の姿勢が感じられます。
この柔軟な出場資格制度によって、WBCは「血のつながり」や「文化的背景」を軸にした国際色豊かな大会となっています。
野球の実力だけでなく、自分のルーツや家族の歴史に誇りを持って出場する選手たちの姿は、多くの人に感動を与えます。
また、普段は出場機会に恵まれない中堅国や成長中の野球国が、海外在住選手の参加によって実力を底上げできることも、国際野球のレベルアップにつながっています。
WBCの出場資格は、単なる「国籍の有無」ではなく、血縁やルーツも大切にされています。
そのため、選手のアイデンティティや文化的背景が多様に交差するユニークな大会となっています。
この制度により、多くの選手に出場機会が開かれ、野球の国際大会としての魅力がより一層高まっています。
ルーツと現在が交差する舞台――それがWBCなのです。
次回のWBCでは、どのような背景を持つ選手が活躍するのか?その視点から選手名鑑やロースターを見ると、より深く大会を楽しめるかもしれません。
WBCでは、「その国の親または祖父母のいずれかが出生していること」が出場資格になります。
つまり、本人がその国に行ったことすらなくても、祖父母がその国出身であれば代表入りできる可能性があるのです。
👉 例:アメリカ育ちのイタリア系選手が、イタリア代表としてWBCに出場するケースが多数!
2023年WBCで注目を集めたイスラエル代表の多くは、実はアメリカ生まれのユダヤ系選手。
イスラエルではユダヤ人に国籍取得権があるため、「出場資格がある」とされます。
👉 ほとんどの選手がヘブライ語を話せないという“異色の代表チーム”でした。
2023年大会で話題となったのがラーズ・ヌートバー選手。アメリカ生まれ・育ちですが、母親が日本人のため日本代表資格あり。
この「母が日本人」というルールにより、彼は史上初の日本育ちでない日本代表選手となりました。
選手によっては、予選ではある国で出場し、本大会では別の国で出場したケースもあります。
ルール上、予選と本大会で出場国が異なっていても条件を満たせばOKという柔軟さがあるためです。
👉 例:過去には、予選でブラジル代表→本大会でイタリア代表という選手も!
特にヨーロッパや中南米では、自国のリーグが未発達なため、MLBやマイナーで育った選手を血縁ベースで招集するケースが多いです。
こうした選手は“逆輸入選手”とも呼ばれ、自国では無名でもWBCでスター選手として活躍することも。
国籍がなくても、その国の永住権を持っていれば出場資格あり。
これは移民国家であるアメリカやカナダなどに多く見られるルールで、多様性の象徴とされています。
「まだ国籍を取っていないが、取得可能な条件にある」ことを証明できれば、それだけで出場可能になる場合もあります。
これは申請中の人や、法的に国籍が付与される予定の選手に配慮した規定です。
WBCの選手の参加資格は、国際的なスポーツ大会の中でも特に柔軟です。
そのおかげで、多様性とドラマに満ちた大会となっており、「なぜこの人がこの国に?」という視点で見るだけでも一味違った楽しみ方ができますよ!