千葉県では、キョン(シカ科の特定外来生物)の繁殖が農業に深刻な影響を及ぼしています。20年以上前にレジャー施設から逃げ出したキョンは野生化し、現在の推定生息数は7万1500頭に達しています。農作物への被害は年間421万円にも上ります。
許可を受けた猟師による駆除も進んでいますが、キョンは非常に素早く捕獲が困難です。さらに、駆除時のキョンの泣き叫ぶ声は猟師にとって大きな心理的負担となっています。
千葉県での急激なキョンの個体数の増加が報道されると、では駆除し食べることが出来るか?食用にしたら良いではないのかと考える人も少なくないようです。
キョンは特定外来生物に該当するため法律上、駆除の目的で殺傷すること自体は可能です。
実際キョンを食肉として利用する動きもあります。千葉県南部の君津市にある「猟師工房ランド」では、キョンを食肉に加工し販売しています。キョンの肉は脂身が少なくヘルシーで、ジビエとしての希少性を考慮すると価格も妥当です。食べた人の感想としては、ジビエ特有の臭みが少なく、意外にも美味しいとのこと。
しかし、外来生物法ではキョンの殺処分が基本とされ、生物を殺して食肉に加工することに対する批判も存在します。食品衛生法では特定外来生物を食べること自体に規制はなく、キョンの肉は良質なタンパク源として利用できますが、商業的に販売することでキョンの肉に市場価値が生まれるリスクがあります。このため、商業的にキョンの肉を売り出すことは難しいとされています。
このように、キョンの問題は多面的で複雑です。繁殖の抑制、駆除の効率化、食肉としての利用可能性、倫理的な懸念など、解決には幅広い視点とアプローチが必要とされます。
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