「ハチ」と「ハチ公」―なぜ「公」がつくのか?
渋谷駅前にある有名な犬の像「ハチ公」。なぜハチをハチ公と呼ぶのでしょうか?
この「ハチ公」という名前における「公」は、どのような意味を持つのか、気になる方もいるのではないでしょうか。今回は、この「公」の使い方に注目し、その背景やニュアンスを探っていきます。
「ハチ公」の由来
まず、「ハチ」という名前は、飼い主を亡くしてからも渋谷駅でその帰りを待ち続けた忠犬の名前です。ハチの姿は多くの人々の心を打ち、その忠誠心が社会で広く知られるようになりました。その結果、1934年にハチの銅像が渋谷駅前に設置され、今では渋谷のシンボルともいえる存在となっています。
では、なぜ「ハチ」に「公」がつけられたのでしょうか?
「公」という言葉の使われ方
日本語において「公」という言葉は、必ずしも敬称として使われるわけではありません。確かに、「源義経公」や「徳川家康公」のように、歴史的な偉人に対して敬意を表して使用される例もありますが、他方で「先公」(先生)や「ポリ公」(警察官)のように、少し皮肉や見下しを含んだニュアンスで使われることもあります。このように「公」という言葉には、尊敬の意味と同時に、親しみを込めた軽い意味合いもあるのです。 実際、犬に対しはて「ワン公」という犬全般を軽く見下した呼び方もありますね。
「ハチ公」の場合はどうなのか?
「ハチ公」の場合、「公」は必ずしも敬意を表しているとは言い難いと考えられます。むしろ、その背景には、当時の大衆文化やハチに対する親しみが強く影響しているのではないでしょうか。ハチが忠犬として称賛される一方で、「ハチ公」という呼び名は、庶民的な親しみやすさや、少し軽んじるようなニュアンスを持っている可能性があります。
「先公」や「ポリ公」と同じように、「公」をつけることで、犬全般に対する軽い見下しや、親しみを込めた表現が強調されているとも考えられます。つまり、「ハチ公」という名前には、単なる忠犬としての称賛だけでなく、ハチが多くの人々に親しまれるべき存在だったこと、そしてそれを少し砕けた形で表現した可能性があるのです。
おわりに
「ハチ公」の「公」には、単純な敬意だけではなく、親しみやすさや大衆的なニュアンスが含まれていると考えられます。日本語の「公」という言葉には、多面的な意味があり、文脈や時代背景によってその意味合いは大きく変わることがあります。「ハチ公」の名前も、その時代や文化の中で、さまざまな解釈を持ちながら受け入れられている一例と言えるでしょう。
渋谷駅前の「ハチ公」像は、今後も多くの人々に愛され続け、その名と共に忠犬の物語が語り継がれていくことでしょう。
ハチ公に関するトリビア
1. ハチは秋田犬
ハチ公は純粋な秋田犬です。秋田犬は日本の天然記念物にも指定されている犬種で、忠誠心が強いことで知られています。ハチ公のエピソードは、秋田犬の特徴である「忠実さ」を象徴する物語として広く知られています。
2. ハチの誕生日は1923年11月10日
ハチ公は1923年11月10日に秋田県大館市で生まれました。渋谷駅での姿が有名ですが、彼は秋田犬として日本の北部で誕生したという背景があります。
3. ハチ公の映画
ハチ公の忠実な物語は世界的にも知られており、アメリカでも映画化されています。2009年に公開されたリチャード・ギア主演の映画『HACHI 約束の犬』は、ハチ公の物語を基にしたアメリカ版の映画です。この映画によって、ハチ公の物語はさらに国際的に広まりました。
4. ハチ公の剥製が存在する
ハチ公は亡くなった後、彼の忠誠心を記念するために剥製が作られ、現在は東京の国立科学博物館に展示されています。銅像だけでなく、実際のハチの姿も博物館で見ることができます。
5. ハチ公の像は2度建てられた
現在渋谷駅前にあるハチ公像は、実は2代目の像です。初代のハチ公像は1934年に建てられましたが、第二次世界大戦中に金属が不足していたため、戦時中に解体されました。現在の像は1948年に再建されたものです。
6. ハチ公の最期の場所
ハチ公は1935年3月8日に亡くなりました。彼の遺体は渋谷駅付近で発見され、最期まで渋谷駅に留まっていたことが確認されています。ハチ公の忠義心は彼の最期の瞬間まで続いていました。
7. 毎年行われるハチ公の記念式典
ハチ公の命日である3月8日には、渋谷駅前のハチ公像の前で毎年記念式典が行われます。この式典では、ハチ公の忠誠心を称えるために多くの人々が集まり、花を手向けます。